
きょうもいくつかのカメラを持ち出したのだけど、その中から夕方に持ち出した初代X100のことを備忘録的に少し書き残しておきたい。
X100は、正確にはFUJIFILM FinePix X100で、発売はもう10年以上前の2011年3月5日。そう、現在のFUJIFILM Xシリーズの初代機である。この初代機には、当時の富士フイルムのコンデジシリーズの名称「FinePix」という呼称が入っている。
当初はシルバーボディだけで展開されていたのだけど、それから一年後くらいに登場したのが、このX100 Black Limited Editionである。
写真からも少し分かるかもしれないけど、このBlack Limited Editionには専用の革ケースが付いているほか、なんといってもその塗りの贅沢さが素晴らしい。昔のフィルムカメラで言われた「ピアノブラック」のような濃厚な塗りで、僕なんかはこの塗りにやられたと言っていい笑
現在人気のX100VIの元祖であり原型みたいなモデルだから、基本スタイルはほぼ同じと思ってもらえれば分かりやすい。レンズ固定式で、OVFとEVFが切り替えられるハイブリッドビューファインダーの世界初で載せ、そのスタイルはご覧の通りクラシックスタイルのカメラデザインの走りとなったもの。
そもそものスタイルがクラシックゆえに、10年以上経過したいまでも古さはまったく感じない。むしろ、時代がようやく追いついてきたというか、ここにきて各社ともヘリテージデザインと銘打ったクラシックスタイルのミラーレス機がどんどん登場しているから、このX100は先見の明があったのかもしれない。
さすがに性能のほうは、現行機らと比べるとかなりおっとりしている。オートフォーカスもお世辞にも速いとはいえないし、高感度性能も強くはない。いわゆる現代の優秀なコンデジたちと比べると電子デバイスとしては古さを感じるが、こと「写真機」として捉えるといまでも十分楽しめるところもまた、ある意味凄い。

マクロ撮影ではピント合わせの都合上、EVFで撮ることになるが、パンフォーカス的にスナップするのであれば、ある程度絞ってOVFでマニュアル撮影的に使えば、AFスピードの遅さなども気にせず、スパンスパンとシャッターが切れる。
そう、まさにフィルムカメラの撮像素子がフィルムからセンサーに置き換わった以外は、フィルムカメラで撮る所作と特段変わらない「写真機」と思ってもらえればいい。往年の写真機のようだから、感度もフィルム時代のように最高でISO1600とかISO3200で撮るもの、と思えばそこも気にならないのだ。

フィルムシミュレーションも初代機は実にシンプル。PROVIA、Velvia、ASTIAのカラー3種類と、モノクロ(カラーフィルターがいくつか選べる)しかないから、そう迷うこともない。レンズもいまだにファンの多い1型の開放がやわらかい単焦点レンズが載っていて、これもどこかフィルム時代の少し甘い描写を感じさせてくれる。
こういうカメラでいざ撮ろうとすると、おのずと気分もおっとりするというか、変に気負うことなく、それこそフィルムカメラのように一枚一枚ゆっくり撮るスタイルだから、これがむしろ現代でX100を使う独特の魅力といっていいだろう。

たまにね、そういう感覚で撮りたくなるんだなあ、これが。まあ、万人におすすめするものではないと思うけど、もしお店で運良く見かけたら、値段がバカみたいに高騰さえしていなければ、程度を確かめつつ触ってみるといいだろう。単にルックスだけでなく、その中身もフィルムカメラの残像を色濃く残した機種であることが感じられると思う。
X100の描写や使用感については、過去にもいくつかブログを書いているので、興味のある人はブログ内検索などで読んでもらえれば幸いだ。あとはもうね、とにかく値段が高騰しないのを祈るばかり。まだまだ実用としても使い方次第で十分選択肢になる一台だからね。そう、いい「写真機」とは廃れないのだ。