僕の場合は、カメラとレンズのデザイン的な装着バランスもこだわるほうだから、まずもってはこの両者が織りなすフォルムが気に入っている。
フルフレーム用の85mmの明るいレンズだからそれなりに重量もあるのだけど、それはある意味「ガラスの塊」の証のようなものなので、むしろやる気をそそる心地いい重みだ。
グリップがほぼないNikon Zfでもこれだけ凛々しくフィットするから、深いグリップを持つNikon Zマウント機であれば、さらに勇ましい「本気フォルム」みたいになるんじゃないかと思う。
と、まずはフォルムのことを書いたけど、当然このレンズに惹かれる魅力はその描写だ。いわゆるポートレイトレンズの焦点距離に初のAF機で参戦してきたアストロリの本気具合がうかがえる、そんな開発者の気合いを感じる写りだと僕は感じる。
当然、開放で撮りたくなるレンズだが、その開放付近でも実になめらかなボケを垣間見せてくれる。こういうレンズと出会うと、人物のみならず四季の草花なども人に見立てて撮りたくなるから、自然と被写体を凝視して観察するような意識も芽生えてよい。
そういう美しい描写をダイナミックに体感できる85mmの明るいレンズだから、当然純正レンズではかなり高価な部類に入るけど、このアストロリのレンズであれば、その半額並みの価格で手に入るのだから、ちょっと軽い衝撃だ。しかも、AFレンズだからね。
アストロリはまだまだ日本国内では知る人ぞ知るレンズだと思うけど、僕はけっこうファンで、いろんなレンズを借りたり買ったりしてじぶんなりに探求中だ。ちょっと驚嘆するスタイルのレンズも開発しているアストロリだが、そのなかにラインナップされたオーソドックスなレンズの生真面目さに特に一目置いている。
根底には強いチャレンジスピリットがあるんだと思う。カメラやレンズの世界が成熟化、高級感するなかで、できるだけ手の届く価格で、でも性能や個性に妥協しないスピリット。そういう心意気みたいなものがどこか見え隠れするのがアストロリ製品の魅力だと思う。
日本国内には焦点工房さんグループの2ndfocusさんが紹介、取り扱いされているので、アストロリブランドが気になる人はSNSや公式サイトを見に行ってもらえればと思う。
中国製レンズはいまや、いろんなブランドがあって、日々新しい製品が続々と生まれているけど、そんななかでアストロリは台風の目的なユニークな存在になっていくんじゃないかと個人的には楽しみにしている。ひとつのブランドが成長していく様子の目撃者のようで、それもまた楽しいのだ。