きょう2021年7月1日、話題といっていいニコンの新しいAPS-Cミラーレスカメラ「Nikon Z fc」の予約がスタートした。Twitterのタイムラインなんかを見ていても、これまであまり見たことがないくらい「予約しました」というツイートが目につく感じで、この勢いはなんだか売れそうな予感。久しぶりにニコンの元気な姿がうれしかったりもする。
その人気の要因はなんといっても、そのクラシカルなデザインシルエット。だって、みんな実物に触りもせずに予約しているわけで、特段スペックで期待させるカメラじゃないことを考えれば、このZ fcの姿だけで「欲しい」「買おう」と思わせるわけだから、そのデザインパワーとニコンらしさの資産は、やっぱり特別なわけです。
で、実は上の記事は少し前に書いたものなんだけど、なんとなく僕の中でジワジワとクラシックなカメラブーム来てるぞ?という予感みたいなものがあったんだけど、今回このZ fcが発表されたことで、それはどうやら確信といってもいいんじゃないかと。
最近でいうと、FUJIFILM X-E4、OLYMPUS PEN E-P7、そして今回のZ fcだからね。どれも間違いなく、フィルムカメラのあのノスタルジックな雰囲気とか、レトロな佇まいがまず目を引く製品コンセプトになっている。僕的にいえば、ようやく時代が「スマホにはないカメラらしさ」のアピールに本腰を入れてきたなって気がするんだよね。
少しこれまでの歴史に目を移せば、そのハシリとなったのは、10年前に富士フイルムが独自性を追求したFUJIFILM Xシリーズの誕生と言えるのかな。X100が登場して、そのまるでフィルムカメラなスタイルのミラーレスカメラの登場に、世界が驚き、懐かしさもあってとてもカメラファンたちが沸いた、いま思えばクラシックスタイルのデジカメ物語の始まり。
その後、ニコンが一眼レフでNikon Dfを出し、オリンパスがPEN-Fを登場させるなど、静かではあるけど、クラシックなスタイルのカメラたちはマーケットのなかで居場所を探し続けてきたように思う。たぶん、カメラ開発者としては自信作だったろうし、カメラ好きの人間の一人として「こんなカメラらしいカメラが世の中に増えると素敵だよな」と思いながら、世に送り出したんだと思う。
でも、マーケットはなかなかシビアというか、DfやPEN-Fは一部のマニアックな人向けのカメラとしかなかなか評価されなかった。そんな中、ひとり気を吐いていたのがFUJIFILMだったんじゃないかと思う。そう考えると、富士フイルムが切り開いてきたこの10年間の「カメラらしさ」の浸透の軌跡はかなり評価すべきことで、FUJIFILM Xシリーズのクラシックなスタイルは、ある程度メジャーなもの、普通なものへと変わってきたからね。
DfやPEN-Fを経てクラシックなスタイルのカメラに魅せられた僕は、そういう意味では自然の成り行きのように、いまFUJIFILM のカメラたちをメインの愛機にしている。いや、なんかうれしいんだよね、どこかマイナーだったであろうこのクラシックなスタイルのカメラというジャンルが、今回のZ fcの登場で、メジャーなジャンルまで引き上がった気がしてね。
写真を撮るだけなら、いまはたしかにスマホカメラでも驚くような高精度な写真が撮れる。でも、そんな中であえて嗜好品としてカメラを持つ意味としては、やはり所有する楽しみや撮るプロセスの楽しみに高揚できるカメラが絶対必要なんだよね。そこへ、やっとというか、カメラメーカー各社が目を向けてくれたと。しかも、フィルム時代を牽引してきたニコンが今回ミラーレスでそこへ打って出た。なんか、時代の転換点みたいなものを感じずにはいられない、うん。
依然としてカメラ産業は厳しいことには変わりないだろうけど、それは「このまま」であればということ。挑戦して未来を作る側に各社が立てば、それは状況はちょっと変わるんじゃないかと、僕は割と本気で考えている。日々の生活の中に、クラシックなスタイルのカメラの姿が増えれば、それは間違いなく何か風が変わる予感。そういうムードをいま感じながら、僕は少しだけ高揚している。
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