
去年の今頃、突如として発表された新型ミラーレス機「Nikon Z fc」の姿に、Nikonファンのみならず久しぶりにカメラ界全体がどっと沸いた。それもそのはず。まるでフィルム時代のNikon機のようなデザインで登場してきたからだ。
いや、いま見ても「よくぞ、このデザインで出してきたな」と惚れ惚れする。
僕はクラシックなスタイルのカメラが好きで、デジカメもFUJIFILM XシリーズやOLYMPUS PEN-F、Nikon Dfなどをこれまで愛してきたけど、Nikon Z fcは同じ路線に見えつつも、もう一段踏み込んだ「デザインが最高性能」という強い意志を感じる。これが「ヘリテージデザイン」なるフレーズの真骨頂か。
Z fcの「c」はカジュアル【casual】の意味で、それこそこれまでカメラに興味がなかった人にもカジュアルに身につけてほしいというポジションで、フルサイズではなくAPS-Cで大きさや重さ、コストも抑えて登場した。そして、実際にひと目見て「なにこれ、かわいい!」といった理由から、Z fcでカメラを始めた人も少なくないと思う。
その立ち位置も成功だったと思う。現代のカメラはスマホカメラとの差別化もあって機能が高性能化していて、それはそのまま値段の高騰にも直結している。「カメラは高価」になった。けれど、そんな中でもZ fcは手が届きやすい価格帯を目指していることが読み取れて、それがまた「カメラ趣味の人を増やしたい」というNikonの心意気を示していて、僕なんかはグッとくる。

コストを抑えている分、例えば合皮の張り革の感触が滑りやすいとか、底面のバッテリー蓋がプラスティッキーで安っぽいとかという部分もたしかにある。けれど、それも僕のように革ケースを装着したり、別売りの後付けグリップを装着すれば解決する。むしろ、それでZ fcの「らしさ」は個人の好みでさらに高まる。
操作性や写りの良さについては、NikonのZシリーズそのものだから、悪いはずがない。むしろ、この値段でNikon Zマウントの世界がレンズも含めて味わえるのはバーゲンプライスと言えるかもしれない。これからカメラを始める人、もしくは他社製品からNikon製品へとブランドスイッチする人たちにとって、目論見通り「入りやすい入り口」になっている。
登場からひと頃は、とにかく品薄でなかなか手に入れることすら難しかったが、最近ではようやく新品、中古ともに手に入りやすい環境も整ってきたようで、こういうスタイルのカメラが「現行ラインナップの定番製品」になったことがジワジワと感慨深い。
7月ももうすぐ終わりに入り、いよいよ夏も残り1ヶ月間のラストスパート。いろんな思い思いの夏を、いつかのために写真に封じ込めて、人生のストーリーブックを作っていく。そんな相棒に、適度に小さく軽く、そして持っているだけで気分が上がるカメラ Nikon Z fcと過ごしてみるというのも、なかなか素敵なひと夏の過ごし方ではないだろうか。
このカメラには、そういう気分にさせる魔法のようなものがやっぱりある。
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