カメラの楽しみのひとつは「レンズ交換」だろうと思う。特にミラーレスカメラはオールドレンズという価値を復活させるなど「多彩なレンズを楽しむ」という趣味の世界を大きく広げた。
一旦、このレンズ交換の楽しさを見出すと、いつの間にか「レンズの旅」へと放浪してしまって、なにやらレンズのために写真を撮っている、みたいなことになったりもする。
それはそれで楽しいのだけど、写真を撮るというシンプルな行為から、少し目的が複雑化するというか、選択肢が多いことにちょっとお腹いっぱいになって、ふとシンプルに撮りたいと思うことがある。
そんな時に、X100Vはいい。そう、レンズ交換できないのだ。
レンズ交換できないカメラはコンデジというジャンルに括られるけど、X100Vに関しては「レンズ交換ができない」ということ以外はまったくコンデジらしくない。
大きさからしてパッと見は本格的カメラに見えるし、ファインダーもEVFだけじゃなくて光学ファインダーでも撮れるすぐれもの。シャッターダイヤルや絞りリングを配したデザインは、いかにもフィルムカメラの味わいを思わせる。
そして、ひとたびX100Vで撮り始めると、「あ、なんかこれ一台でいいじゃん」といつも思うのである。
35mmの画角に明るいF2のレンズが、レンズ固定ならではの薄さで収まり、全体のカメラの大きさの割にはとてもコンパクトに感じる。このコンパクトさの印象は想像以上に大きい。
ある意味、レンズ交換から解放され、身軽なサイズのカメラと過ごすことの心地よさ、自由さみたいなものが、このカメラにはあるのだ。
富士フイルムのXシリーズがこのX100シリーズから始まったことは、そうした「写真撮影の根源的歓び」を言い表しているのかもしれない。
いまは、僕自身もいろんなカメラやいろんなレンズを楽しんでる最中だけど、もしかしたら行き着く先には「シンプルな写真撮影への回帰」みたいなものがあるかもしれないし、その時はこのX100Vだけを残してシンプルに過ごすんじゃないかとか、ふと考える。
ある意味、究極のカメラなんだよなあ、FUJIFILMのX100V。