巷では5.10に予告されたNikonの新製品Z8が発表されるのではと言われているけど、そんな情報の片隅に「秋にはZfも?」といった文字も見かけた。Z8同様に、このZfなる仮称の製品の噂もずっと絶えない。
いわゆるヘリテージデザインと言われる往年のフィルムニコン機をオマージュしたレトロデザインのZfcが、カジュアルな質感でAPS-Cで登場したもんだから、本格機を望むユーザーの多くが「どうせならフルサイズで重厚な質感のモノを」というところだろう。
言うなれば、Nikon Dfの後継機とも言えるミラーレス版のZfと言うわけだ。
たしかに、Zfcが発表された時に僕もフルサイズ版のZfのことを妄想はしたものの、いざZfcを手にしてみると、やはりデザイン以外は根本的に別物であることを再認識するに至る。
そう、「FマウントとZマウントの違い」と「OVFとEVFの違い」である。
もしZfなるヘリテージデザインのフルサイズミラーレスがZマウントで出てくるとしたら、往年のオールドニッコールのレンズたちを装着しようとするなら、どうしてもあの大ぶりなFTZアダプターを間に噛ませねばならない。あの細身のFマウント時代の佇まいを醸し出すのはなかなかむずかしいと個人的には感じる。
あと、撮影時の体感の最大の違いはOVF(光学ファインダー)じゃないということだろう。EVF性能がかなり上がったとはいえ、自然な光をリアルに取り込むOVF像と電子的なEVF像は、良くも悪くも別物だ。EVFにはいろんな可能性を感じさせる先進性があるが、そこはどうしても「かつてのアナログ的体験」とは距離を置くこととなる。
それでも、ヘリテージデザインのフルサイズミラーレスが出れば画期的であるが、オールドニッコールも含めたプロダクトの全体的な機能美と光学ファインダー体験を考えると、Zfなる製品のトータル的な満足感の仕上げ方は相当難度が高いと思う。
逆に「アダプター無しでオールドニッコールを堪能したい」とか「光学ファインダーのリアルさは譲れない」というのであれば、これはもう元祖のNikon Dfを手に入れるほうが手っ取り早いかもしれない。
レフ機だからたしかに厚みはあるが、大きさも重さも実はFマウント時代のフルサイズ機としてNikon最小最軽量。ミラーレス機と比べるとボディはたしかに大きさを感じるが、逆にレンズが大ぶりとなるZマウント機と比べればオールドニッコールを含めた塊感はDfのほうが軽快感があるのではと思う。(いちおうZ6とDfの体験者なので)
そして、Dfは動画機能もWiFi機能も無いが、撮影から帰宅してSDカードリーダーでプチ現像的に写真と対面するなど写真機として使えば、いまでもなんら不満は感じずにNikonらしさを色濃く堪能できると思う。いまなら、中古価格もずいぶん下がってきたのではないだろうか。
つまり、Dfという選択もアリアリなのだ。
僕はこのDfを長年愛用してきているのと、そのわけが上記のような撮影体験の理由から、Zfなる製品が出てきても手にする予定はいまのところ考えていない。まあ、古い人間だからといえばそれまでなんだけど、そこはなかなか譲れない趣味カメラとして醍醐味の核心的部分でもあるので。
そのうえで、そんな理由を吹き飛ばすかのようなヘリテージデザインで突破するような魅力的なプロダクトが出てきたら、それはそれでまたあっぱれなんだけどね。
といっても、妄想的噂に対するさらに個人的な妄想的発想なので、異論反論はご遠慮いただきたい。でも、Dfはほんと良いですよ。この機会にぜひ一度、お店で実機を触って、Nikon開発陣が当時夢見た世界の一端を感じてみてほしい。
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