FUJIFILM X100 Black Limited Edition

毎朝起きると朝の散歩に連れ出すカメラをどれにしようと思案し始めるのが日課なんだけど、今朝はなにか無性に初代X100で撮りたくなり、バッテリーを新しく交換して散歩へ連れ出した。

僕のX100は正確にいうと、シルバーボディのX100の登場からしばらく経ってから追加発表されたブラックリミテッドエディション。たぶん富士フイルムの開発陣も気合いが入りすぎたと思われる、その塗りの贅沢さがたまらないモデルだ。

パッと見は現行のX100VIなどと同じ佇まいに見えると思うが、よく見るととにかく全体的にクラシックな造形とライン構成であることがわかると思う。あまりカメラに詳しくない人なら、まずフィルムカメラと思うんじゃないだろうか。

FUJIFILM X100 Black Limited Edition

当然ながら、この初代モデルからX100シリーズはハイブリッドビューファインダーを積んでいて、ご覧の通りガラス素通しの光学ファインダーがなんともいえない写真機らしさを醸し出している。

レンズも旧型で開放はいい意味でオールドレンズ的な甘さがあり、X100V以降の新型レンズとはまたひと味違ったエモーショナルな描写を楽しむことができる。このレンズが好きであえて四世代目のX100Fまでの機種を溺愛している人も少なくない。

センサーは通常のベイヤー配列のCMOSセンサーを採用していて、おなじみX Trans CMOSセンサーはこの後登場するX-Pro1からの採用だ。正式名称もFinePix X100であり、そういう意味では、一般的なコンデジから高級コンデジへと大転換を試みた、いかにも実験的で試作機的な気配を持つモデルである。

当然ながら操作部の挙動もいまと比べるとかなりおっとりしていて、速写するためのコンデジではないけど、そのおだやかさは「写真を一枚一枚、じっくり丁寧に撮る」という、いかにもフィルムカメラのあの撮影体験のリズムである。写真機らしさという点では、この挙動が撮り手の気分までおだやかにしてくれる。

フィルムシミュレーションもシンプルだ。元祖のPROVIA、Velvia、ASTIAの3種類のカラーと、ACROSになる前のスタンダードなモノクロしかない。しかし、それがいい。迷いなく撮れるというか、むしろ種類が少ないだけに、どのフィルムシミュレーションを使うかということを意識する感覚がある。

先日、Xシリーズは15周年であることを公式SNSなどで発表していて、初代機は当然ながら15年前のデジカメになるわけだけど、オールドコンデジと呼ぶにはあまりにリッチな作りで、僕は古さというより「味」を感じる。おそらくこの作り込みは製造コストに対して、かなりオーバースペックだったんじゃないかと思うしね。

FUJIFILM X100 Black Limited Edition

そういう開発の熱量みたいなものは、オーラ的もなかなか廃れるものじゃない。本気で作られたものは、年代を重ねても「ヴィンテージ」として輝き続けるんだなと、X100なんかを見ているととても感じる。

いまの時代に写真を撮るすべての人へおすすめするという製品ではないけど、そうしたカメラの歴史や軌跡みたいなものも感じながらデジカメを楽しみたい人には、いまもアリなんじゃないかな。

少なくとも僕は、いまも、これからも手放す予定はない。むしろ、初代X100に対する尊さや愛おしさは年を重ねるごとに増しているのである。なんでもかんでも短いスパンでプロダクトが一新される時代にあって、この時間の流れ方は素晴らしいことなんじゃないかと個人的には感じている。