どうですか、このいかにも機械らしい凛々しいフォルム。1959年だったかな、Nikonが世に放ったF一桁機の初代機「F」。日本の工業技術が繁栄を極め始めた頃の「自信」みたいなものもが漲ってるというか、なんとも言えないオーラがある。
デザインは亀倉さん。カメラのデザイナーではなかったから、このような鋭角のペンタ部と「F」の文字が配された独特の佇まいになったのかもしれない。僕は後継機であるF2のほうを性能面の良さでよく使うが、存在感という意味では「F」が圧倒的だろう。
僕の個体のせいかもしれないが、意外と甲高い硬質なシャッター音を奏でる。F2のほうがさらに高音で鋭い印象があるが、このFもナイフの切れ味を擬音化したような、脳に「撮ってるぜ」と言わんばかりに感触が響く。もちろん、僕はこのシャッターフィールがたまらなく好きだ。
それからすると、各部の建て付けはF2と比べると緩く甘いが、それもまた味だ。なんといっても1960年代のフィーリングで写真を撮るわけだから、現代とは異なるクラシックな雰囲気を堪能するのも「F」で撮る醍醐味だろう。
僕はオートニッコールと合わせて撮ることが多いが、レンズと合わせるとなかなかの重さになる。首にかけたままだとずっしりくるが、手に持って歩いたり構えたりする分には不思議と重さは感じない。プロ向けに送り出された高性能カメラとしてのバランスの良さなのだろう。(以下のリンク記事に赤城耕一さんがFの解説をしてくれています)
もちろん、オートフォーカスもプログラムモードもない、電気を使わないフルメカニカルシャッター機なんで、現代の最先端ミラーレスカメラのようにはカメラがあれこれはしてくれない。でも、だからこそ、じぶんがカメラを操って撮っている感覚は濃厚だ。つまり、趣味のカメラとしては操り甲斐がある逸品でもある。
フィルム価格が高価なんで手放しにお勧めはできないが、こういう道具で写真を撮る感覚はちょっとデジカメには真似できない高揚感がある。たまにフィルムを詰めて、日本のカメラが世界を席巻し始めた頃のプロダクトの世界を味わってみるのはどうだろう。フィルム写真の良さとは、フィルムカメラならではの素晴らしさでもあるのだ。
★今日のセール商品をチェック!