まさしく「勇姿」という言葉が似合うような眺め。誤解を恐れずに言えば、美しいというよりも無骨で「男の道具」という艶かしさを発するのが、このカメラとレンズの組合せである。
PENTAX K-1 Mark IIとVoigtländer APO-LANTHAR 90mm f3.5 SL Close Focusの共演である。
なじみのお店の店員さんから、いまとなっては希少ともいえる「Kマウント版」のこのレンズの在庫があることを聞き、思わず取り置きしてもらった後、お店でその現物を確認したわけだけど、もう無言の迫力というか、これは「やる」と確信し購入した。
もともとはフィルム時代にレンジファインダー用としてコシナが発表したレンズで、その後に一眼レフ用に鏡胴仕様があらためられ、Kマウントを含む各社マウント用がいくつか発表された初代タイプだ。
レンジファインダー用は最短撮影距離も1m程度だったんじゃないかと思うけど、一眼レフ用は50cmまで寄れる仕様になっているのがうれしい。Close Focusというのはいわゆるクローズアップできるマクロ的性能を指すものらしい。
で、このレンズの最大の特徴はその名の通り、APOの称号が表す赤緑青の三色の色収差を高レベルで抑えている写りにある。その証としてレンズ前部にはこの赤緑青の3本ラインが入っている。
撮影前にネットで情報を調べてみると、開放からコントラストが高く、開放f値は決して明るくないものの寄れるため、美しいボケも堪能できるとあり、それはもう完全に僕の散歩レンズ好みのままじゃないかと。
実際に撮影してみると、たしかにその描写にはグッと心を鷲掴みされる迫力がある。大きな光学ファインダーを持つK-1 Mark IIならマニュアルのピント合わせも良好。気のせいか、このレンズをつけて撮り歩くと、斬れ味鋭いK-1IIのシャッター音がさらに官能的に聴こえる。もはや、たまらない感触だ。
露出補正±0だとちょっと明るめに写ると聞いていたので、-1/3〜-2/3程度に下げて撮っていたが、絞りはほぼ開放のまま。空を撮る時だけしっかり絞ったが、このレンズの抑揚を感じとるならやはり絞り開放がオツであろう。
いやもう、何も言うことはない。ただただ感動である。僕がフォクトレンダー好きというのもあるけど、同じく激しく愛するPENTAX機との組合せは、僕にとってはフルコースの料理に値する。どんな高価な機材よりも心震えるものがあるのだ。
僕のPENTAX機の常用レンズといえば、同じくフィルム時代の至宝FA Limited 三姉妹レンズだが、このAPO-LANTHARはそれに匹敵するインパクトを僕にもたらす。しばらくは、これをK-1IIにはつけっぱなしになるだろう。
APS-CのK-3 Mark IIIやK10Dにつければ、換算135mm程度か。それはそれでまた独特の目線というか、僕の好奇心を刺激してくれる。その描写の話は、また後日のこのブログにて。
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