2023年を迎えて初詣へ出かけても、そこで写真を撮っている人はスマホカメラを構えている姿ばかりで、いわゆる記念撮影みたいな写真はすっかりスマホで撮る時代になったんだなあと、あらためて思う。
スマートフォンは、ほぼ常に持ち歩いているから、思い立った時にすぐ構えて写真を撮ることができる。考えてみれば、実に画期的な超薄型カメラの発明だったわけである。
そう、写真を撮ることの第一歩は「持ち歩いておくこと」である。
僕もカメラを始めた頃は週末だけNikonの一眼レフで写真撮影を楽しんでいたけど、そのうち平日もスナップ写真が撮れるカメラが欲しいなと思うようになり、同じくNikonのコンデジを手に入れ、やがて起動が俊敏なRICOH GR(APS-C初代)を手に入れた。
その小さく軽いカメラの影響は計り知れなくて、街撮りスナップも、広角も、縦構図も、モノクロームも、いまの写真趣味につながる知識みたいなものは、ぜんぶRICOH GRが教えてくれたといっても過言ではない。
そんなだがら、現行のGRIIIが登場した時にも発売日に手に入れてGRを使い続けていたんだけど、そんな最強のコンデジGRIIIを下取りに出してまで手に入れたいと思ったカメラが僕の前に現れた。小型軽量のレンズ交換式カメラであるFUJIFILM X-E3である。
この頃はフィルム撮影も楽しんでる時で、それこそバルナックライカなんかで日々街撮りスナップをしていて、そうなると「ファインダーのぞいて、オールドレンズも楽しめるコンパクトなデジカメ」でスナップしたいなと思い始めた。あと、フィルムシミュレーションの「ACROSモード」で撮りたいというのも決め手だった。
X-E3は、僕の中のスナップ撮影の楽しみをGRからさらに一段上げてくれた。GRのように背面モニターでノーファインダー的に撮れるのはもちろん、フィルムカメラで撮る楽しみがそのままデジタルにも移行できた気がしたのだ。
ファインダーをのぞいて、絞りやシャッタースピードを眼下のダイヤルで合わせ、おまけに高感度フィルムを自在に扱えるような感覚。当時、フィルムでも夜スナップを始めていたんだけど、X-E3を手に入れたことで夜スナップがさらに加速したと思う。
しかも、小さく軽いのである。薄いレンズをつければ、日々の仕事鞄の中に入れていてもそう気にならない。こうなると、間違いなく、撮る写真の数は増えるのである。
撮る写真の数が増えれば、確率的に好きな一枚も増えるし、なによりカメラを操るじぶんなりの作法みたいなことも確立されてゆく。週末の大ぶりなカメラではなかなか体験できないスピードで、写真の楽しみが濃密にじぶんの生活の中に浸透していくのだ。
かといって、レンズ交換式で上級機と同じセンサーを積んでいるから、決して簡易的なカメラで撮っているという感覚もない。小さく優秀なレンズ交換式カメラとは、カメラシステムのいいとこどりをした、ある意味「究極」なのである。
いま、僕の手元にはX-E3から買い替えた後継機のX-E4がある。コンデジもいくつかあるけど、小型軽量のレンズ交換式カメラとしてはあいかわらず唯一無二だなと思うし、意外とAPS-Sの豊かな描写が楽しめるレンジファインダースタイルの小型機は他に見当たらない。
そのあまりに優秀な性能ゆえか、部品調達のむずかしさゆえか、発売から一年半という短い期間で販売終了となり、中古でもなかなか手に入れるのがむずかしい人気っぷりなのだけど、この「小さなレンズ交換式カメラ」の潜在的ニーズの表れじゃないかとも。
カメラが記念撮影に使うものから、趣味嗜好品として楽しむものへと姿を変えたいま、それでもあえて日々持ち歩いておきたいと思わせる魅力というのは重要だ。それも、性能を落とさずして楽しめる魅力。こういうカメラと出会うと、間違いなく日々に何かしらの変化が現れる。
大きく高性能なカメラを手に入れるのもいいが、意外と人生に大きな影響を与えるのは、小さなカメラじゃないかと思っている。
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