スナップシューターといえば、それこそ「究極のスナップシューター」と自らうたうRICOH GRの代名詞であり、僕自身も長らくGRファンなんで、まったく異論はない。
実際、あれだけのコンパクトさと代々研ぎ澄まされていくその深化はもはやアッパレという感じで、ファインダーが無いことを帳消しにするほどのスナップスタイルを確立した名機と言っていいだろう。
現行のGRIIIもそろそろ後継機が準備されている頃だろうか。昨年サプライズで焦点距離を変えたバリエーション機GRIIIxが登場したとはいえ、28mmのスタンダードGRIIIのほうは発売から数年が経つんで、また極限まで性能を詰めた深化がなされると思われる。
けれど、焦点距離をボディ変更で変えるという、かつてのSIGMA DPシリーズのような思想に打って出たんで、おそらく後継機もズームレンズ化させることはないだろう。
もしかしたらウルトラCとしてフルサイズ化されるとか、ファインダーを内蔵するとかは可能性はゼロじゃないと思うけど、ズームレンズ化だけは無いんじゃないかというのが僕の見立てだ。
となると、GR以外に持っておきたいスナップシューターとして際立ってくるのが、ズームコンパクトという存在なのだ。
僕がいま、とにかく気に入って使っているのがズームコンパクトのLumix LX100 IIやOLYMPUS Stylus SH-1、FUJIFILM X10といった、相当コンパクトにも関わらずズームレンズを積んでいるカメラたちだ。
これらのカメラたちは広角域はもちろんのこと、中望遠域までその場でチョイスでき、それは街中でこそ生きる。身軽なカメラ一台で、何本ものレンズを持ち歩いているようなものだからである。
広角でのストリートスナップはたしかに街が持つダイナミズムみたいなものを大きく捉えることができるんだけど、なんというか、もう少し街の胎動感やリアリティみたいなものを写し込もうと思ったら、中望遠がとてもいいと僕なんかは感じている。
風景というよりは街の生命力を切り取るといった感じだろうか。75mm〜85mm前後の画角で僕は特にそういう印象を受ける。広角では得られないエネルギーみたいなものがそこには確実に存在するのだ。
広角ならGRで撮ればいいというのがあるから、ズームコンパクトを持ち出した時は積極的に中望遠域を使う。LX100 IIはファインダーもあるから、のぞく余裕がある時はそれも積極的に使う。そう、その名の通り中型の望遠鏡や双眼鏡をのぞいているような、少し不思議な感覚だ。
この感覚だけはGRでは味わうことができない。正確にいうと、GRでもクロップすればGRIIIなら標準域まで、GRIIIxなら中望遠域まで撮れるけど、いずれも単焦点であることには違いなく、スルスルとシームレスに被写体を追うズームレンズとはフィジカルさが異なる。
その感覚はやはり別物であり、別腹なのだ。この感覚を一度味わうと、GRもいいけど予期せぬ一日になりそうな時はLX100 IIをはじめとするズームコンパクトを鞄に忍ばせておこうと思う日が増える。
どちらがいいとかそういう話ではなく、ソリッドな単焦点もいいし、フリーダムなズームコンパクトもいい。つまり、どちらもあったほうがスナップの日常が変わる、という意味である。
もちろん、コンパクトなミラーレス機にズームレンズを装着してもいいだろう。大きささえ気にしなければそれでも「いつもと違う目」が得られると思うけど、スナップシューターとはできる限り躊躇しないで取り出せて構えられるか、というのが撮れ高に大きく影響するから、その点でズームできるコンデジであれば完璧である。
まあ、僕の私見がかなり入っているけど、いちおうGRフリークである僕が言うのだから、ズームコンパクトの楽しさを素直に説くことは嘘にはならないだろう。
街は、まだまだ僕らが見たことのない角度や切り取り方が無限にある。そういう別次元の目を手に入れるのもなかなかおもしろいんじゃないだろうか。スナップもまた無限なのである。