カメラを始めると、ひとは理想の描写を追いかけるとともに、それを実現してくれそうなレンズ探しの旅に出るみたいなところがある。世間はそれを「沼」とも言うが、僕はそれを「旅」と考えている。理想のレンズと巡り会うための、人生の長い旅だ。
そんな僕にとって、愛機のひとつであるFUJIFILM GFXにおいて、じぶんにとっての理想的なレンズを探すこともまた、日常の旅であった。
そして今回、その現時点でのひとつの答えとなるレンズに出会った気がする。それが、Mitakon Speedmaster 65mm f1.4という大口径のMFレンズだ。
中一光学は以前から名前は知っていたが、まだその製品は使ったことはなかった。日本では「SPEEDMASTER」という製品名のほうがよく目にする呼称だけど、海外では「Mitakon」と呼ばれ、カメラ好きから愛されてるらしい。
どんな経緯でこのレンズのことが気になりだしたのかははっきりしないのだけど、富士フイルムのラージフォーマット機であるGFXで「より明るいレンズで撮ってみたい」と考え始めたら、自然とこのレンズにたどりついたように思う。そう、このレンズの特徴は、なんといってもf1.4という明るさにある。
僕がこれまでGFXでは体感したことのない明るさの世界。なんとか一度、その描写をじぶんの目と手で試してみたいと考えていたところ、焦点工房さんが試写用に同製品のレンズを貸してくださるというので、お言葉に甘えてお借りしてみた。
で、試し撮りを開始してみたのだけど、もう初日の時点で、じぶんでも驚くくらいすっかり気に入ってしまった。これは僕が無類のボケ好きであることも大きいと思うけど、ファインダーをのぞいた時の絵、背面モニターに映し出される絵、そして帰宅してから眺める画像データの絵に異常に魅せられた。
まさに、冒頭の「じぶんとっての理想と思えるレンズとの出会い」だと、感じたのだ。そう納得するのにそれほど時間は必要なく、試写用レンズをお借りしてから丸一日使い込めば判断にはもう十分だった。焦点工房さんには「正式に購入します」とお伝えし、めでたくMitakon 65mm f1.4を手にすることになったのである。
詳しいスペックなどを知りたい人は、リンクの焦点工房さんの公式サイトを見に行ってほしいが、僕が使ってみた感想と、試し撮りしてみた辺りの写真を何枚か貼っておくので、なにかしらの参考にしてもらえれば幸いだ。(写真は可能なかぎり開放付近で撮っているので、描写の甘さなどはご了承を。)
このレンズの購入を検討する時に最も気にしたいのが、その重さである。なんと、1050gという1kgオーバーのレンズなのだ。ボディと合わせてではなく、レンズだけでこの重さというのは、スペックだけ見たらかなり怯む。僕も初めはそう考えた。だからゆえに、実物を実際にGFXに装着して撮り歩いてみたかったのだ。
GFX 50SIIが約900gほどだから、ボディとこのレンズを合わせた重量は2kg近くになる。フィルム中判カメラのHasselblad 500C/Mがレンズ込みで1500gほどだと思うので、それよりさらに重い。AF機構のないMFレンズなのに、なにが中に入ってこれほど重いのか?と思わず考えてしまう。
しかし、いざGFXに装着して撮り歩くと、想像したよりは苦悩する感じはない。正確に言うと、クソ重いとは感じつつも、そのファインダーと背面モニターに映るなんとも美しい描写を見ていると、重いことを忘れて夢中で撮り歩いているじぶんがいる。そんな感じだ。
まさしく金属とガラスの塊のようなレンズは、質感としては申し分ない。ピントリングもニュルリとなめらかでいかにもカメラ好きが作ったであろう上質さ。絞りリングもクリックのないタイプだが、こちらはスルスルと簡単に動かないように少し重めの感触に設計されている。まあ、このレンズを使う人はほぼほぼ開放かf16しか使わない気がするが笑
あと、微妙にうれしいのが、逆付け収納型のフードが付属していること。いちおう逆付け時と装着時の写真を載せているので、参考にしてもらえたらと思う。こうして見ても、レンズそのものは決して巨大じゃないんだけど、それでも1kgオーバーの密度があるということは、僕はもうシンプルに贅沢な光学性能の証だと思っている。
フルサイズ換算で50mm程度の画角なのも実に自然で使いやすいし、70cmまで寄れれば僕的には十分。そこらへんもお借りしたレンズでしっかり使い心地を確認できたので、もうあの描写を見たら、僕としては購入するという選択肢しか思い浮かばなかった。
なんといっても使い始めてまだ二日間なので、あまり多くを語れるレベルにないが、とにかく一瞬で購入を決めたという、その使い心地と試し撮りの描写はいち早くお届けしたいと思い、まずは第一弾のブログを書いてみた。
中国製レンズとしてはお高い部類に入るかもしれないけど、それでも10万円ちょっとで、中判デジタルでこの描写が得られるのであれば、それはやはり注目すべき選択肢のひとつ。僕に関していえば、安いからというより、この描写に惚れたことが購入の最大の決め手だ。
国内の純正レンズなどがどんどんと高性能化されるとともに、どこかおりこうすぎるレンズになっていると個人的に感じている。たしかに軽量で優秀なフジノンのAFレンズなども魅力だが、MFでまだまだ開放描写に個性が感じられるレンズとして、個人的には最近はは中国製レンズにとても注目している。
たぶん、昭和の頃の日本のレンズ産業の個性とかやんちゃさみたいなものが、いまの中国製レンズにはあると僕自身が感じてるのかな。僕の場合は、スナップ写真には高精細な感じよりも遊び心を求めるので。
そういう意味でドンピシャ、僕のGFXの使い方にフィットしたのがMitakon 65mm f1.4。なんかGFXが生き返ったというか、再びすごく活性化した気がしていて、やはりボディを新調するよりレンズを新しくしたほうが新鮮味は大きいとあらためて思った。GFXユーザーの皆さん、これはひとつ検討の余地ありのレンズかと。
◎Hasselbladの中判デジタル用もあるみたいなんで、中身は同じだと思うけど、いちおうマウントごとに作例などネットで調べてみるといいと思う。もう発売されて数年経つから、そういう意味でもいまが入手できるチャンス期かもしれないね。
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