
このタイトル写真を見たら、装着されたレンズは明るめの50mmのレンズかなと誰もが思うんじゃないかな。フードこそやや大きく見えるけど、レンズ本体の鏡筒の長さは実にコンパクトだからね。
しかし、これが90mmの中望遠レンズなのだ。まずはなんといっても、このちょっと信じられないようなコンパクトさが、僕にとっての驚きであり、このAPO-ULTRON 90mm f2 VMを手に入れた理由だ。
思えば僕がM型ライカに初めて装着した90mmレンズは、スクリューマウントのElmar 90mm f4だった。写真で見てもらうとわかる通り、ボディからツノが生えているかのように長い。





けれど写りはこれが実に絶品だ。開放値はf4と明るくないが、中望遠だけにボケは豊かで、これはボケ好きな僕にはたまらない描写の一本であった。中古カメラ屋でもよく見かけるElmar 90mmだと思うので、試したことがない人には、価格も安いし、ぜひ一度体験することをおすすめする。
このElmar 90mmはその後なにかの拍子に手放してしまうのだけど、その最初の90mm体験がとてもいい印象だったことが頭の中にあり、その数年後に再び90mmレンズを手にする。それが、Summicron 90mm f2 第二世代だ。
ライツカナダ時代のこのレンズは、なんといっても初代リジッド型ズミクロンを彷彿とさせるローレットほかのデザインの仕上げがたまらない。そして、以前のElmarと比較して絞り開放値がf2と明るく、これも再び90mmを使ってみたいと考えた要因だった。





このレンズも僕的には当たりだった。それは見た目も、写りも、クラシックなカメラ好きの人間なら誰しもが心撃ち抜かれるものであった。しかし、ご想像の通り、これだけの巨体なのでその重さもなかなかヘビーだ。M型ライカに常に装着して楽しむ、とまではなかなかならない。たまに持ち出す、そんな90mmであった。
つまり、90mmの描写には心を打たれつつも、その長さや重さゆえに常用レンズとは呼べずにいた僕の目の前に、まるで50mmレンズのようなAPO-ULTRON 90mm f2 VMが出現したのである。しかもアポクロマート仕様でレンズ構成はゾナータイプをベースにしているという、もう僕にはそそる要素の塊だったのである。
注文してから数日後にレンズが届き、実物を手にした時は、なかなかの感動だった。まさしく、これは50mmレンズなんじゃないか?という軽量コンパクトさだった。フードの造形も美しく、長さこそあるが実に凛々しくカッコいい。各リングの動きの滑らかさなどもコシナ品質の素晴らしいものであった。




試し撮りをするのに早速外へ持ち出したが、実際にM型ライカに装着してぶら下げても、とても90mmのレンズを装着しているとは思えない軽快さだ。なんだ?これは冗談か?というレベルの驚きだ。ブライトフレームは小さいが、二重像を合わせるのも特に苦ではない。となると、もはや僕にとっては常用レンズとなるのになんの問題もなかった。
描写も実にたまらない。正直、専門的な知識を持ってして説明できる知見が僕にはないが、その描写が僕の好みに突き刺さっていることは数枚撮るだけで理解した。背面モニターに映し出された画像を見るだけでも気分が上がる上質なものだ。





Elmar 90mm f4から始まった僕と90mmの旅は、Summicron 90mm f2 2ndを経由して、いまここ、APO-ULTRON 90mm f2へ辿り着いたのである。ここまでいくつかな90mmを経験してきたからこその、この感動だと思う。やはり、新しいレンズとの出会いとは、それまでのレンズとの軌跡が大きく作用する巡り会いであり、必然なのだ。
APO-ULTRON 90mm f2は、たぶんこれからの僕のM型デジタルライカで最も多用する常用レンズになると思うので、これからもこのブログに頻繁に登場すると思うので、きょうのところはこんなところで書き終えたいと思う。






このAPO-ULTRON 90mm f2はもちろんおすすめだが、それは僕のこれまでの軌跡によるものでもあるので、まずはElmar 90mm f4、そしてSummicron 90mm f2 2ndなどを体験してみるのもいいと思う。そうやって、比較的手頃な90mmを使ってみて「相性がいいな」と思えば、満を持してこのAPO-ULTRON 90mm f2を手にしてみるのもいいのではないだろうか。
それにしてもコシナ・フォクトレンダー、あなたたちの作るレンズのクレイジー加減が、僕は好きだぞ。スペシャルGJだ。

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