その名を聞いた時にフィルム時代のPEN Fを思い起こす人が多いと思うけど、その伝説の名機の名を冠してオリンパスが映像事業80周年を記念して2016年に発表したのが、このデジタル版のPEN-Fである。
今となってはオリンパスの名もカメラメーカーとしては無くなり、それと同時にこのPEN-Fも一代で幕を閉じることになる。そういう意味では、もともと後継シリーズを考えたモデルというより、最初で最後のメモリアルモデルとして開発されたカメラなのかもしれない。
最初で最後のモデルだったからか、とにかくその作り込みの美しさは呆れるほどの高いレベルにある。そのこだわりようはちょっと神がかり的で、その外観にはビスのひとつすら見られない。
ファインダーまわりの造形、バリアングルモニターを閉じた時の貼り革の仕様、コダクロームを意識したプロファイル。ここまでやってしまうと当然コストにも跳ね返ったであろうことは容易に想像がつき、実際マイクロフォーサーズとしてはかなり高価な製品であったと思う。
その価格帯であればAPS-Cやフルサイズの他製品も視野に入ることから、正直このカメラは売り上げとしては苦戦したと思う。
けれど、僕なんかはそのある意味クレイジーなカメラづくりに魅せられたわけである。マーケティング的には売れるカメラが良いカメラなのかもしれないけど、PEN-Fはもっと突き抜けた「人々を魅了するカメラ」をめざし、挑戦したんだと思う。80周年のメモリアルモデルでなければ、おそらく製品化までこぎつけることは難しかったのではないだろうか。
そんな「大多数の人にウケるカメラとは異なる製品」を出したことが、オリンパスのカメラ事業の首を絞めたかもしれない。けれど、その突き抜けた挑戦があったことで、僕はいまだに愛着を持ち続けるカメラに出会うことができたとも言える。
僕個人的には、継承ブランドのOMデジタルソリューションズにPEN-Fの後継機を望んではいない。PEN-Fとはこのモデルが唯一無二であり、OMデジタルソリューションズの今後のカメラはもっと未来を指向した製品開発をめざせばいいんじゃないかと思ってる。
願わくば、このPEN-Fの修理体制が末永く続けば、それが最も望ましいメモリアルモデルの在り方じゃないかな。
というわけで、このPEN-Fをいま手にしようと思えば、もうほぼ中古モデルを手に入れるしか方法はない。そこまでして2016年登場の古きデジカメを手にする必要があるのかといえば、これはもうその人の価値観次第だ。
ただ、間違いなく言えるのは、手に持った時の言いようのない満足感もまた、唯一無二だということ。じぶんのこだわりを投影できるカメラで写真を撮ることもまた、高揚感を得る趣味カメラの在り方ではないかと思っている。
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