まあでも、いろいろ語らずとも、まずこのフォルムにクラシックカメラ好きな人ならシビれるんじゃないだろうか。
そう、FUJIFILM X10というカメラは「小さな小さな本格的カメラ」という呼称が良く似合う気がする。
それもそのはずで、10年前に世界を驚かせるクラシックなルックスとクオリティで登場したX100に続き、Xシリーズの第二弾として投入された意欲作がX10なのである。
僕も当然、XシリーズのルーツであるX100初代機にはゾッコンで、X100Vを普段使いしつつも、たまにX100が使いたくなっていまでも現役の一台。その存在感という意味では、現行機のX100Vよりカッコいいとさえ思っている。
そんな初代X100の弟分であるX10が、素晴らしくないワケがないのである。
写りのほうは文句なく美しい。フジノンの真骨頂はたとえコンデジと言えども手を抜いていないことが、この描写で伝わってくる。
それはそうだ、X100だってコンデジなのだから、FUJIFILMのXの精神はコンデジに凝縮されてると言ってもいい。
そして、僕があらためて声を大にして言いたいのが「光学ファインダー」であることと「ズームできるコンデジ」ということ。
もちろん背面モニターを見ながらピントをAFで合わせて撮る、いわゆるコンデジらしい使い方もできるけど、少しじっくり撮れるシチュエーションの時には光学ファインダーを覗きながらズームリングを回して風景を切り取るという、いかにも本格的カメラで撮っているという気分も味わえる。
これはもう、ぜひ、一度体験してみてほしいところだ。
ズームは28mm〜112mmまでカバーしていて、これが当たり前だけどけっこう便利。街中で広角から中望遠まで手元でサッと変えられるスナップシューターというのは、いざ使ってみるとなかなか魅力的な目であることが分かる。
しかも、その視界は自然光を感じられる光学ファインダー。趣のあるひとときが楽しめるのは想像がつくと思う。
手に持った時の質感も、いかにも「いいモノの塊感」があって見事な仕上げだ。このあたりは富士フイルムの開発陣の執念を感じるレベル。
なにより、X100よりも二回りほど小さく感じるボディサイズは、思わず鞄に入れて持ち歩きたくなる身軽さがある。
僕は、このカメラはけっこうこれから使い込むことになるなと確信したんで、予備バッテリーも注文して手に入れた。
光学ファインダーだから、背面モニターをオフにすれば電池の持ちは良さそうだけど、スナップするには予備バッテリーがあるに越したことはない。
ちなみに、なんとなくモノクロがしっくりくると思ってるんだけど、ちなみにこの時代の白黒は「ACROSモード」ではない。
けれど、素のモノクロモードがまた、美しいんだよね、富士フイルムの場合。このあたりはやはり、フィルムを販売してきた会社の真骨頂ではないだろうか。
このFUJIFILM X10は、現在では中古でしか手に入らないけど、程度のいいモノを見つけられたら当然かなり安く入手することができる。
その価格に対して、大袈裟ではなく驚くほどの満足感が得られることだろう。それくらいこのカメラは、いいモノというオーラがある。
ぜひ街中で、散歩道で、光学ファインダーでのぞくズームスナップの世界を堪能してほしい。きっと、かなり新鮮な気持ちが込み上げてくることだろう。