
EVFとOVFが切り替えできるFUJIFILMのハイブリッドビューファインダーは現在でも唯一無二の存在で、FUJIFILMのXシリーズのなかでもX100シリーズとX-Proシリーズにしか搭載されていない。
前面から見るとたしかに”レンジファインダー的なスタイル”に見え、そのファインダー部分の主張が写真機らしいムードを醸し出していることは間違いない。
しかしながら、このハイブリッドビューファインダーを「ほぼEVFでしか使っていない」というユーザーが多いとも、富士フイルムの開発者インタビューで見聞きした記憶がある。

僕も遠景のスナップはOVFで撮ることが多いが、近接の時はEVFでピントを追い込む感じで使っているのと、タイトルに書いた通り「モノクロで撮る時」に気分転換的にモノクロのEVFをのぞいて撮影を楽しんでいる。
それがどうした?みたいに普通なことにしか聞こえないと思うけど、けっこう冷静に考えると、ファインダーをモノクロでのぞけるというのは、EVFのミラーレスカメラならではのメリットなんだよね。
フィルムカメラやデジタル一眼レフで長らく撮っていた身からすると、OVFのガラス素通し的なファインダー像をのぞくのが普通で、ミラーレスカメラのファインダーの進化もこのOVFのナチュラルさにいかに近づけるかの進化であったと思う。

でも、EVFがOVFを真似るのではなく、あえてEVFだから味わえるのが、このモノクロのファインダー像を見て撮影できることなんじゃないか、と個人的には思っている。
もちろん、モノクロ写真の仕上がりを想像しながらカラーのファインダーをのぞいて撮り、イメージ通りにモノクロ写真が撮れた時の歓びは、フィルム時代から変わらないいかにもモノクロ写真の楽しさではある。
でも、そんなことを超越して、ただただ「モノクロのファインダー像」というのが、個人的には撮影していてとても新鮮に感じるのである。

こんなことをいちいち意識して考えている人はいない気がするが笑、まあ僕の中ではそれもまた気分転換というひとつのカメラの楽しみ方なのである。なので、これはなにもFUJIFILMのカメラにかぎった話ではなく、ミラーレスカメラ全般のおもしろみの話である。
EVFは実際に撮れる画像がファインダー内で見えてしまうので、それは便利である一方で「答えが先に見えて楽しくない」という向きもある。それは僕も同じで、それゆえに一眼レフ機やレンジファインダー機を好むのだが、色を抜いた光と影だけのモノクロのファインダー像で世界を見るというのも、実におもしろい。
モノクロのファインダーで世界を見ると、カラーでは気づきにくい微妙な光の交錯する感じが見えて、それはちょっと月面の拡大写真を見ているような、ちょっと人間の目では本来見えない世界を垣間見ているような気さえする。

EVFがすっかり当たり前な現代に、なにをいまさらそんなことを言ってるのかと思われそうだが、まあ、日々いろんなスタイルのカメラを使っている人間の、素朴な感想ということで。
ブラケット撮影ができるミラーレスカメラだと、逆にモノクロのファインダー(モニター)を見てカラー写真を撮る人もいるだろう。RICOH GRやSIGMA fpなどモニターを見て撮るミラーレス機では僕もけっこうやっている。
モノクロ写真は現代でもまったく廃れることなく、写真らしさのひとつの表現スタイルをいまも確立し続けているが、「モノクロのファインダー」というのもまた、現代らしいモノクロ撮影のアップデートなのかもしれない。