この写真のカメラはX-Tシリーズのなかでも初号機となる「X-T1」。もう10年も前に登場した製品とは思えない洗練された感じが今もある。
そういう凄みというかオーラみたいなのは、いかにこのカメラの製品化過程において開発者たちの熱き魂や執念が注ぎ込まれたかが滲み出たものだと思う。
事実、富士フイルムのYouTube動画のなかで、Xシリーズ開発において最も印象深い機種は「X-T1」という開発者の皆さんのコメントもあったと思う。最も苦労した、という思い出深さだとは思うけど。
この製品を出す時に、オブザーバー的に助言などをもらっていたプロの写真家さんから、「この形で出すなら、もう趣味のカメラとは言えない、本格的なカメラとしての性能を求められる」と気合いを入れられたとも開発者の方が語っていたように記憶している。
この形とは、いわゆるレンジファインダースタイルではなく、一眼レフ機のようなプロが仕事で使うカメラの形、という意味だろう。そして、たしかにこのX-Tシリーズがラインナップに加わってから、Xシリーズは飛躍を遂げ、現在のX-H2系やGFXシリーズまでその世界をひろげたと言っていい。
実際、この初代X-T1の作り込みの素晴らしさは、いま使ってもまったく遜色ないというか、僕なんかは現行のX-T5と並べて交互に使っているくらい。高画素で撮りたいとか最新のフィルムシミュレーションで撮りたい時はX-T5を持ち出すが、そうでない時は普通にX-T1がコンパクトで使いやすい。
こんど新たにX-T二桁機の新機種の発売なんかも噂にあがってるけど、たしかに激しい円安によって高額気味となることが予想されるけど、「コンパクトなX-Tシリーズ」というのは富士フイルムの精神性が凝縮されたラインでもある。その使いやすさと質感・性能のバランスは相当高いんじゃないかな。
僕はX-T一桁機が使い慣れてるし、愛着があるけど、初めてFUJIFILMの写真機らしい一台を検討する人たちには、X-Tシリーズの選択肢が増えることは単純にいっても素晴らしいことだと思う。
その選択肢はなにも新品じゃなくてもいい。X-T2はいまだに現行機かと思う質の高さだし、X-T3はある種の完成形。そしてX-T4は動画性能も磨かれた全部入りのXシリーズ頂点モデル。このあたりのX-Tシリーズはどれを選んでも満足感は高いだろうし、その弟分のX-T二桁機や三桁機もまたチャーミングで所有欲をそそる。
フィルムカメラのようなクラシックなデザインを楽しみつつ、中身は高水準のミラーレス機に仕上げられた「THE FUJIFILM」のようなX-Tシリーズ。まだ触ったことがない人には、ぜひその手に馴染む、いかにも「いいモノ」という感触を一度体感してみてほしい。
いい意味でFUJIFILMのカメラの印象が、さらに変わるかもしれない。
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