過去にFUJIFILM X-T1を使ったことがある人なら、たぶん共感してもらえるのではと思う。それほどまでに、このX-T1というカメラは「使ってみれば分かる」という質感の高さが感じられる。
たしかに登場から10年ほど経過しているから、そういう意味では「最新の質感」とは異なると言えるかもしれない。けれど、そこに古めかしさを感じないのは「写真機としての基本性能」がしっかり作り込まれているからだろう。
富士フイルムのXシリーズが10周年を迎えた時の公式YouTubeで、各製品の立ち上げの苦労話を振り返った開発秘話動画があるが、そのなかで最も開発に苦労した製品として、このX-T1の名前が出てくるのが印象的だ。
それまでX100、X-Pro1など、いわゆるレンジファインダースタイルの趣味性を感じさせるカメラでXシリーズは他社と差別化を図ってきたが、ペンタ部のあるいわゆる「ザ・カメラ」的な世界に入っていくなら、それ相応の覚悟がいる。そう、アドバイザーの方々からも言われたそうだ。
それゆえに、このカメラは趣味性という遊びの要素よりも、実用機という高次元のバランスが求められる。その一つひとつをクリアしていくための努力が並大抵なものじゃなかった、ということだろう。
カメラ界がミラーレス時代になったいま、たしかに電子機器としてのハイテク機能の更新は著しいが、考えてみるとこのX-T1は10年も前に、その基本性能を確立している。それはいま考えても、もっと評価されていいことではないかと思う。
僕はX-T1の後継機であるX-T2も使っていた時期があるが、そのX-T1のあらゆる箇所を洗練したクオリティは凄まじいものがあるとさえ感じている。いいレンズを選べば、スチル撮影であればカメラはこのX-T1やX-T2でまいまだになんの問題もないだろう。
本当に優れたカメラは、手にとった瞬間にその出来の素晴らしさが分かるし、そう簡単に年数で廃れたりしない内なる迫力がある。X-T1というカメラは、そういうカメラだ。決して新品の高価なカメラだけが性能の指標ではない。そんなことを、このカメラは教えてくれる。
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