
僕はいろんなカメラとレンズを使っているし、そのどれもにそれぞれ良さがあって全部お気に入りなんだけど、なかでもいちばん心地いい組合せは?ともし聞かれたら、この組合せだと答えると思う。
FUJIFILM X-Pro3と、Xマウント用に設計されたVoigtlander Noktonである。
Xマウント用のNoktonは電子接点が設けられていて、比較的最近の機種であればEXIF情報が記録できるなど、この電子接点が活用できるが、なかでもX-Pro3であればOVF時のパララックス補正なども行うことができる。

レンズが登場したタイミングを見ても、X-Pro3にいちばん最適化されたレンズと言ってもいいだろう。そんなOVFとEVFのどちらで撮っても快適に使えるXマウント専用のNoktonの使い勝手は最高というほかない。
僕は35mmはVMマウントのシングルコートのNokton Classicをアダプターを介して使っていたので、Xマウント版のNoktonは23mmのほうを選んだ。マップカメラ30周年記念モデルでもあり、特別な塗装やスリッド型フードもさらに気に入っている。
描写はNoktonだけに、言うことはない。さらに、最短撮影距離が18cmと驚くほど寄れるので、このあたりの感覚はM型ライカにNoktonを合わせるのとはまったく異なる。しかもEVFでも撮れるから、やはりX-Pro3とXマウントのNoktonの使い心地は唯一無二なのである。



絞れば絞ったで、またこれがキレのある別物レンズのような描写が堪能できる。X-Pro3のハイブリッドビューファインダーや隠し液晶による小気味いい撮影リズム、そして軽快なシャッターフィールと相まって、スナップ機としてはダントツにおもしろいのである。
僕がJPEG撮影を好むのもあり、フィルムシミュレーションを選んで撮るというのも性に合っている。その日のフィルムシミュレーションを選ぶ行為は、いかにも「きょうのフィルムを選ぶ」というアナログ写真撮影の所作を彷彿とさせる。それらすべてがクラシックなスタイルを好む僕の嗜好にフィットする。僕がFUJI機を好む理由でもある。

FUJI機を使っている時は、不思議とセンサーサイズを意識しない。Nikon ZfやSIGMA fpを使っては時は「やはりフルサイズセンサー機の写りはリッチでいいな」とか思うのだけど、FUJI機はそういう「他と比べる」という認識がないのだ。それは、APS-Cサイズがやたらベストなのと、APS-C専用システムを磨き上げてきたFUJIFILM Xシリーズのある種の凄みだろう。
そんな、ある意味、他所とは異なる哲学を積み上げてきた富士フイルムと、これまた独特の哲学を持つコシナのレンズとの共演は、カメラ界のドリームペアと言っていい。その哲学のぶつかり合いのような感覚を堪能できるのは、いまの時代を生きている幸福な出来事かもしれない。機会があれば、ぜひこの世界を味わってみてほしい。