フィルムカメラ

変わらないカメラと、変わる世界。

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僕は変わらないカメラの良さを楽しんでるアマチュア写真愛好家のひとりだと思う。まあ古いにんげんなんで年齢相応にそうではあるんだけど、でもカメラを始めたのはここ数年、フィルムカメラに至っては3年ちょっとくらいなんで、古いカメラを愛しつつも、ふだん撮るスナップ写真たちはプリントすることもなく、こうしてブログやSNSにアップして楽しんでるんで、そこは古い楽しみ方とは少し違うのかもしれない。

僕ですらそうだから、フィルムカメラなんかを楽しんでる若いひとたちは「変わらないカメラの良さ」をクラシカルな味として楽しみつつも、その撮り方も、写真の良し悪しのものさしも、その発表の仕方も本当に自由に今この瞬間の時代の楽しみ方を謳歌してるんだと思う。

昨夜、渡部さとるさんのYouTube「2B Channel」の最新動画を見たんだけど、その中で渡部さんが「経験とかに引きずられることなく若い人たちは面白い写真を生み出している」みたいなニュアンスのことに触れられてたけど、僕も本当にそう思いながら若い人たちがSNSなんかにポストする写真たちを眺めてる。その写真に心動かされるかどうかは、写真の撮影技術の上手い下手とは少し違う解釈の表現力の話だからね。

そんな「変わる世界」だからのタイミングなのか、約一世紀もの長きにわたって写真界を支えてきた老舗雑誌「アサヒカメラ」が次号の7月号をもって紙媒体としての発行を休止するとの一報が聞こえてきた。写真の歴史のほとんどは「プリント」する歴史だろうから、紙で見る写真雑誌というのはまさに一丁目一番地であって、アサヒカメラにしてもおそらく紙の選定も含めて印刷技術にかなりのコストを費やして発行を続けてきたんだと思う。

昨日ひょんなことからアサヒカメラの発行部数を調べてみたら、最近は毎月約27,000部ちょっとという数字なんだよね。これが大きい数字なのか小さいのかはよく分からないけど、今から10年ほど前には50,000部超の発行部数だったと思うから、これは間違いなく雑誌を発行し続けるには世界が変わりすぎているとは言えるんじゃないかと思う。

でも、果たしてアサヒカメラや他のカメラ関係雑誌に書かれているような、なんというか写真やカメラの歴史の延長線上にある、どちらかといえばトラディショナルな印象のカメラスタイルが本当に「写真のいま」なのか?といえば、それもまたどこかすっきりしないものがあるのも確か。トラディショナルなカメラ道が大好きな僕でさえ、いまの若い人たちがカメラを楽しむ「あの自由さ」とは少し距離があるように感じでいたんだよね。

アサヒカメラ 2020.6月号表紙

実は僕はカメラ関係や写真雑誌のほとんどは電子書籍版を購入している。アサヒカメラもをはじめ写真雑誌はKindle版があれば迷わずそちらを購入する。雑誌以外もそうかな、いわゆる書籍も大抵クラウド上の本棚に置いてあって、通勤の時や移動の時にスマホやタブレットで眺めたり、夜はKindleでお風呂読書を楽しんでいる。僕にとってはカメラを始めた頃に紙の雑誌という経験値が特にないから、電子版で違和感がない。むしろ、いつでもどこでも眺めたり読んだらできる電子版のほうが、カメラや写真との距離が近いんだ。

だからかな、今回のアサヒカメラが紙版を休刊して電子版のみになりそうなことを、実はそれほど悲観的には捉えていないんだ。というのも、今回の6月号なんか読んでるとね、トラディショナルな写真道みたいなものがベースにありつつも、例えば奥山由之さんのちょっとこれまでの常識を打ち破るようなフィルム写真の撮影スタイルなんかも生き生きと描かれてるし、僕なんかはすごく共感する内容だった。アサヒカメラが「いまこそ、フィルム!」と銘打った今回の号は、文字通り「いま流の写真の楽しみ方を追いかけ直します!」という宣言なんじゃないか、とさえ感じたんだ。

いまは、SNSのInstagramやnoteなんかにもプロ/アマチュア問わず、みんな新しい気配の写真をどんどん披露してるし、その姿勢とかスタイルみたいなものを言葉やムービーでどんどん語ったりしてる。アサヒカメラが電子版スタイルになれば、そういうオンラインを活躍の舞台にしている写真家さんなんかとももっとコラボレーションとかしやすくなるんじゃないかと思うんだ。そして、それはきっとトラディショナルなカメラ道を楽しんでる人たちにも大いに刺激になる。

Leica IIIa & Smmar, 撮影はLeica M3 & Summicron

僕はカメラというプロダクトが大好きだし、フィルムカメラがこの時代に人気になるのも「変わらないカメラ」の良さをみんなが気づいて、手間暇かけるクリエイティブな表現を楽しんでるし、それはこれからもむしろ広がっていく気さえする。一方で撮った写真を披露したり語ったりする場はオンラインへと移行することで、世界の人たちと同時多発的にこの写真の世界を楽しむことがますます広がっていく気がする。そう「変わる世界」の道の上に僕らはいまいるんだ。

すごく本質的なことをいえば、時間の経過とともに世界は動いていくし、世界は良くも悪くも変わり続けていく。それは、カメラというものの楽しみ方すらも大きく変えてくれる可能性を秘めているとも解釈できる。だから、僕はアサヒカメラのしなやかな変身に期待したいし、大好きな雑誌だから、その試行錯誤な挑戦をこれからも応援し続けていきたいと思う。カメラも写真も世界には不可欠な文化だからね。

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