Nikon F2

嵐の恐怖をNikon F2の空シャッターで紛らす。

Nikon F2 アイレベル

ふだんなら身も心もゆったり過ごせる日曜日の午前だけど、特別警報レベルといわれる台風が近づいていて、どこか心がざわつく。といってもあまり出来ることは少なくて、風で飛びそうなものを玄関まわりに収めて、あとは正直、祈るしかない。大きな被害が出ないことを。

夜はどうやら怯えて眠れそうにないので、台風がまだ本格的じゃない昼間のうちに仮眠をとっておこうかと思ったけど、その前に心を落ち着かせる必要があると思い、愛機Nikon F2アイレベルを取り出す。

Nikon F2アイレベルはたぶん、僕が最も愛するカメラのひとつ。「ひとつ」というのは、もう一台愛機と呼べるLeica M3があるから。この二台は特別だ。両方ともフルメカニカルシャッター機であることは偶然ではなくて、たぶん、いろんなカメラを触ってきて、結局僕がたどり着いたのが機械式カメラだったんだろうと思う。

しかも、この二台は外へ持ち出して撮る時はもちろん最高なんだけど、こうして外へ出られない時に、部屋で静かに空シャッターを切るのがとにかく心地いい。F2はよく言われる少し甲高い金属音が鳴り響く。このいかにも剛性感の塊のような、機械式カメラの最高峰といえる「質」はたまらない。

一方、Leica M3は好対照ともいえる一台で、その空シャッターはひたすら静かだ。フィルム送りレバーの感触からしてニュルリとミリコンマの隙もないような精密な動きをする。これもまたオーバークオリティ時代のカメラの最高傑作であるが、いまは残念ながら残りフィルムがまだ入っていて、空シャッターを切ることはできない。

だから、きょうの嵐の前の静けさは、F2アイレベルの甲高いシャッター音で少し気を紛らす。嵐と戦うわけじゃないけど、F2と少し戦闘モードに入るような感覚の僕がいる。もちろん、シャッターを切るという行為でいえばデジカメだってできるんだけど、あれはやはり空シャッターとは違う。僕は部屋シャッターと呼んでいる。空ではないから、やはりね。

空シャッターとはフィルムカメラだけに与えられた、心を何かしらのスタンバイ状態に持っていく静かな儀式。誤解を恐れずにいえば、空シャッターを切るという行為のためだけでも、安いフィルムカメラを手に入れる価値があると僕は考えている。嘘だと思ったら、ジャンク品でもいいからシャッターだけは切れる機械式カメラを手に入れてほしい。そして、目をつぶって数回、空シャッターを切ってほしい。やられるよ、本能が。

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