Nikon Df

写真機 Nikon Dfとの快楽的時間。

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Nikon Df, Auto Nikkor 50/1.4

2013年の登場だから、もうすぐ10年もののカメラになるNikon Df。ところが、いまだに日常使いしているDfユーザーは少なくない。

その真骨頂は「シンプルである」ということだろう。

このカメラは、当時だからというわけではなく、意識を持って「動画機能を持たないスチル専用機」として発売された。それゆえに、使い手の意識も「写真を撮るだけ」というシンプルな思考ニーズだし、当然造りのほうも動画機能を持ったカメラよりシンプルに構成されている。いまじゃ、ここまでシンプルな思想のカメラを探すほうがむずかしい。

けれど、そもそもの開発の出発点が「フィルム時代からの往年のニッコールレンズがほぼすべて装着して楽しめる」というものだから、そうした撮影スタイルを求める僕なんかには、むしろごちゃごちゃした余計な機能がなくて、それこそフィルムニコンを操作していたそのままの使い方で容易に扱える。実に写真撮影に没頭できるのである。

感度ダイヤルでISO値を決めて、レンズの絞りリングを回して絞りを決める。そのまま絞り優先で撮ってもいいし、シャッタースピードダイヤルまでマニュアルにこだわるのもよし。とにかく、あまり余計なことを考えなくてシャッターまでたどり着けるのだ。まあ、本気でハイテク機能を駆使して撮っている人からは怒られそうだが、それが僕の最もリラックスして楽しめる撮影スタイルだ。

Nikon Df

もちろん、現行のオートフォーカスレンズを装着してプログラムモードで普通のデジタル一眼レフ機としてモダンにも使えるし、マニュアルフォーカスレンズの場合でもピント合わせのアシスト機能があるから、なんら古さを感じることなく誰でも味のある写真を撮ることができるだろう。そう、ムービー撮影や激しい動体撮影を求めなければ、写真機としてはいまでもなんら問題なく使えるフルサイズ一眼レフ機なのだ。

その官能的ともいえるシャッターを切った時の感触は、これぞキング・オブ・趣味カメラと思わせる心地よさを頭と体にエモーショナルに伝えてくる。こういう五感に訴えてくる感覚は、そうそう他のカメラで得られるものではない。シンプルに振った結果、このDfというカメラでしか得られない快楽がやはり存在するのである。

Nikonがミラーレスに集中するために一眼レフの開発に幕を下ろすというニュースがあったけど、それは時代の流れとして良しとして、ぜひ一眼レフ機の修理メンテナンス対応だけは末永くやってもらえたらと思う。一眼レフ機に残るアナログ的な感覚は、古いものというより人間的なものだから、それは時代によって色褪せるところか、これからの時代により見直される側面も出てくるだろう。

Nikonの一眼レフユーザーがあちこちで日々体感している何かが、必ずやミラーレス機の独自の進化にも寄与していくはず。そういう新旧が織り混ざった未知の写真体験を、ぜひNikonには描き続けてほしいと思う。他のメーカーでは真似のできない独自の写真体験の世界を。

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