「遊ぶ」と書いたのは、まさに遊び感覚で手に入れられる値段でもあるからだ。
いまから13年前の2009年に発売されたコンデジ RICOH GR digital IIIは、中古カメラ屋で見つけると、大体一万円から高くても二万円はしない程度の価格で売られている。
あの「GR」が、である。
カメラ好きの人間にとって「GR」という響きは特別なものがある。コンデジだけど、もはやコンデジではなく「GRというジャンル」というくらい、確固たる地位を築いている。
現行のGRIIIやGRIIIxは、APS-Cセンサーを積んで3代目にもなり、もはや一眼レフやフルサイズミラーレス機と普通に肩を並べてしまうほど写りの良さが極まっている。
その現行の「APS-CのGR」に対して、13年前のGR digital IIIは「CCDなGR」である。センサーサイズこそ1/1.7型と小さいが、写りの質感についてはあえてCCDセンサーのものを選ぶ人も少なくない。
GR digital IIIは、APS-Cセンサーのような深いボケは期待しないけど、CCDセンサーならではの少しクラシックな色味や描写の質感でパンフォーカスでスナップを撮りたいという人なんかには、まさにうってつけの「遊び道具」になり得るのである。
年代が古いから安いだけで、元々は現行GRなんかと同じグレード感で売られていたものだから、壊れさえしなければ写りの質感も当然ながら素晴らしい。
高感度性能や動作の俊敏さについていえば現行機にはもちろん敵わないが、CCDも三世代となるGR digital IIIはまさに「成熟の域に達したCCDなGR」だから、基本性能がしっかりしてるだけあって、僕なんかは使っていてほぼ不満を感じない。
あと、この時代のGRが素晴らしいのは、接写性能がとんでもないことだ。5mmとか1cmまで寄れる。つまり撮りたいものにほぼレンズ先端をくっつけて撮るほど、撮りたいものに近づいていけるのだ。
「接写5mmから無限遠スナップまで。」
そう考えても、なかなかとんでもないカメラといえるんじゃないだろうか。
まあ、物理的に良いところをあげていくと他にもいろいろあるにはあるが、そんなことよりも「安くて、よく写る。しかもカッコいい。」—-もうこれに尽きるんじゃないだろうか。
すなわち、GRというカメラは、どの時代のGRを切り取ってみても、その基本性能がもたらす素晴らしさはまったく不変なのである。
僕はGRIIIも使っていたけど、いまは先祖返りしてAPS-C初代GRを愛用しているし、CCDのGRもGR digital IIを一台、GR digital IIIを二台所有して日常的に使っているがまったく不満はないし、GRはやっぱりGRなのだ。
最近のカメラはたしかにハイテクでよくできてるけど、値段が高すぎる。そう、遊ぶ感覚であればもっと気軽に手が出せる値段であることが大前提だし、なにより遊ぶなら「安いカメラでフルサイズを圧倒するようなスナップショットを撮る」というほうが最高にカッコよくてハッピーだ。
そういう、カッコいい遊び方をする大人のためのカメラ、それが「CCDなGR」だと思っている。