僕にとっては、カメラは写真を撮る道具である以上に、心を癒してくれる精神安定剤のような存在でもある。いや、そっちのほうが強いかな。それは、こどもの写真や動画を撮るためにとカメラを手にした時に、あれ、僕はもしかしたらカメラというものがとても愛おしいかも、という気づきがあった気がするんだ。
以来、カメラに触ってる時間が僕の中の趣味になった。写真が趣味ですか?と問われるとその技術も含めて曖昧な返事しかできないけど、カメラが趣味ですというのは胸を張って言えそうな気がするしね。
いちばん気持ちいい瞬間は、ファインダー越しにシャッターを切ってる瞬間。ゾクゾクとする。そのなんともいえない没入感が好きだし、それが光学ファインダーなら実際に撮れる写真とファインダーの中の絵の答え合わせのような感覚にワクワクする気分までくっついてくる。
そんな撮ってる瞬間の次に好きなのが、この空シャッターというやつかな。まあシャッターを切る行為が好きだから、例えフィルムが入っていなくてもシャッター音とシャッターショックが頭蓋骨に響く感じがなんともいえず心地いい。
なんだかんだ空シャッター切る時は、カメラボディをまんべんなく触ってるから、適度に機械を動かしてやるという意味ではメンテナンスでもあったりする。静かに自室で一人、東京事変の音楽を聴きながらカメラを触り、空シャッターの音を部屋の中に響かせる感じは、説明のしようのない安らぎがあるんだ。
0時をまわった深夜、家族が寝静まった後の自室でのニヤリとする楽しみ。大人をやってると、やってられないと思うことも多々あるわけだけど、この空シャッターのひとときが少なくとも一瞬は無心にさせてくれるし、なんとなくだけどまた前へ進む気力みたいなものを蘇らせてくれる。スマホカメラじゃ無理なんだ、このプロセスはね。カメラじゃないとダメなんだ。そんなことを思いながら、最高の音色を奏でるF2アイレベルの空シャッターを切る。