僕が〈おすすめのフィルムカメラ〉を聞かれたら。
まずは個別の機種というよりも「マニュアルフォーカスの一眼レフ機を」と言うかな。これはフィルムカメラはMF一眼レフ機じゃないといけないという意味ではなくて、フィルムカメラを楽しむなら「露出を合わせること」を覚えたほうが断然写真を楽しめるから。
デジカメでも撮影上「露出」は関係するけど、ほぼカメラがオートで設定してくれるんで、デジカメからカメラを始めると露出のことを意識する局面はほとんど無かったりするんだよね。
僕もそうだったんだけど、たまたまMFフィルム一眼レフを手に入れて撮り始めた時に「写真を撮ることとは、露出をとること」ということを知ることになる。
空から降り注ぐ光の量や、撮りたい被写体の浮き上がらせ方によって縛り値、シャッタースピードの組み合わせを工夫して撮る、それこそが写真を撮る楽しみの醍醐味ということを知ったんだよね。
もちろん、フィルム写真のあのなんとも言えない味のある風合いを手軽に楽しむということでいえば、写ルンですやほぼオートで撮れるフィルムコンパクト機なんかもおすすめではあるけど、せっかくフィルムカメラを始めるなら「露出を合わせることから始める」ほうがおもしろい。であるなら、俄然価格もこなれたMF一眼レフ機がおすすめというわけです。
まずはその露出を試したいというのであれば、僕のおすすめはNikon FEかAsahi Pentax SP。どちらもボディとレンズをセットで買っても15,000円もあれば買えるんじゃないだろうか。
デジタル一眼レフの新品価格と比べると、え?というくらい安いけど、これがまた、え!と驚くほど良く写る。最初の入門機として手に入れたけど、あまりに気に入ってその後もメインカメラになっている人も多いんじゃないかと思うほどの名機だったりするわけである。
カメラをすべてフルマニュアル設定で撮るのは難しそうと思う人は〈絞り優先AEで手軽に撮れるNikon FE〉、電池を使わずに〈完全機械式のカメラを楽しみたいならAsahi Pentax SP〉。
レンズはどちらも50mm f/1.8を選べば、とても安くて一眼レフならではのボケのあるファンタジックな世界が存分に楽しめます。
もう少しこだわりたい、高性能機にしたいという人にはOLYMPUS OM-1かNikon F3かな。
F3は僕は持っていないんだけど(興味のある人はサンライズカメラさんのサイトで詳細を見ていただくとして)、言わずと知れたMFフィルムニコンの名機中の名機。
電子式シャッターで絞り優先モードで撮れるし、もちろんマニュアル撮影も楽しめる。何よりその秀逸なデザインと精密機械としての重厚感は所有欲をくすぐってくれるよね。
僕はひとつ前の世代の機械式F2を選んだけど、フィルムカメラビギナーなら断然F3が使いやすいだろうね。
あと、機械式シャッターだけど露出計が付いていて、しかも比較的年代も新しいという意味で洗練されているのが、OLYMPUS OM-1。フィルム一眼レフとしては異例のコンパクトさで、とにかくスタイリッシュだ。
PENシリーズでおなじみの米谷さんが開発しただけに、とにかく工芸品のような美しさがある。もちろん、操作フィールやシャッター音もとにかくスムーズで気持ちいい。
価格はNikon FEとF3の中間くらいだろうか。少しまわりの人と異なる通好みなカメラを持ちたいという人には最高におすすめのカメラかもしれない。
で、MFフィルム一眼レフで露出を覚えつつ、やっぱりコンパクトなカメラもちょっとしたお出かけ用に持っておきたいと考えるようになると思うんだけど、その際のおすすめとなると、この二台のフィルムコンパクト機、Konica C35かOLYMPUS PEN EE-2かな。
Konica C35はピント以外はオートで撮影ができる。見た目のスマートさも今見てもとてもモダンだけど、秀逸なのはなんといってもテッサー型レンズ 小西六ヘキサノン。焦点距離38mmというスナップには絶妙な画角と、少し絞られた開放値f2.8というスペックが実にクールで雰囲気ある写真を紡ぎ出す。
これはもう絶品で一眼レフも顔負けの写り、値段も比較的安いのでおすすめです。
もう一つのおすすめは、有名なPENシリーズ。ハーフサイズカメラだから36枚撮りフィルムでなんと72枚も撮れる。お出かけにはフィルム一本詰めればOKなコスパ感はフィルムビギナーにもうれしい性能。
そしてヘキサノン同様、日本の銘玉と言われるズイコーレンズは、ハーフサイズカメラとは思えないシャープな写りをしてくれます。
しかもPEN EE-2が秀逸なのは露出のみならずピントさえもオートで、まさにシャッターボタンを押すだけで驚くような鮮やかな写真を量産してくれる。オリンパスブルーと言われる美しい青色の出方はほんと惚れ惚れします。
あとは、レンジファインダー機というチョイスもある。
一眼レフでフィルムを始めてフィルムコンパクト機で街撮りなんかするようになると、いわゆるスナップ撮影向きのカメラが欲しくなるんだよね。そうするとコンパクトなのに本格的性能を備えたレンジファインダー機が途端に気になり始める。
そう、レンジファインダー機といえばライカだ。ライカは高価な印象があるかもしれないけど、いわゆる35mmフィルムカメラの初号機型であるバルナックライカなら、数万円でボディと銘玉レンズ・エルマーが揃う。
僕は板金ライカの最終モデルといわれるLeica IIIaを使っているけど、この手の中にすっぽり収まるコンパクトさとまるでアンティーク工芸品のような洒落たデザインは、いかにもカッコいい。
写りはなんといってもライカ、まず誰もの期待を裏切らないだろう。初めてのフィルムカメラがライカというのもシビれる選択肢だよね。
僕が使って実感を込めておすすめできるフィルムカメラの代表的なものとなると、こんなところかな。
やがて中判カメラにも興味が出てくるかもしれないけど、まずはフィルムの王道を楽しむということで、ここらあたりをチョイスしてみました。
すでにフィルムカメラを満喫している人にはおなじみのカメラかもしれないけど、たまに「フィルムカメラをやるならどれがおすすめですか?」と聞かれることがあるんで、一度まとめ的に載せてみた。
まあでも、カメラは不思議と直感で選ぶとまず失敗しないので、一目見て気に入ったカメラがあれば、機械として動くかどうかのコンディションさえ確認できれば、どれでも幸せになれる。
フィルム代や現像代はたしかにかかるけど、10万円を超えるようなデジタル一眼レフや最新ミラーレス機を買うことに比べれば圧倒的に安く始められるフィルムカメラ。
とても人間らしい感覚が得られるという意味でも、おすすめだなあ。撮る癒し、どうですか。
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