
なんの脈絡もないんだけど、2023年のカメラと写真の展望みたいなことを書こうと思った時に、ふと「写真もカメラもクラシックな方向へ振れていくんじゃないか」と頭によぎったんだよね。
そう思う要因はいくつかある。ひとつはクラシックなスタイルのカメラの登場である。昨年夏、Nikonが突如として発表したクラシックデザインのZ fcだったり、写真に載せてあるスリーダイヤルのFUJIFILM X-T5の想像以上の人気っぷりであったり。最先端のミラーレス機能とは逆行するようなレトロ感のあるカメラが一定の人気を得ているのは、間違いなくひとつの「現象」といっていいだろう。
もうひとつの要因は、フィルム写真とフィルムカメラの支持だ。もう何年も前からフィルムブームと言われているが、ブームなら世の中の熱が冷めれば人気に翳りも出てくるもんだけど、フィルム写真とフィルムカメラについては爆発的に増えてはいないかもしれないが、急激にブームが去っていく気配もまた無い。ひとつのジャンルとして根付きつつあるとさえ感じる。
ライカのフィルム機M6の復刻はちょっと特別な事象としても、国内のペンタックスもフィルムカメラプロジェクトを開始するとなれば、フィルム写真とフィルムカメラがカメラ産業に刺激を与えるレベルで無視できない存在になっていると言えるんじゃないだろうか。採算が合うかどうかは分からないけど、傍観してはいられない現象なわけである。
ちなみに、フィルムカメラが人気だという記事を見ると、大抵「写りすぎないエモさがいい」といったニュアンスが若い人たちの声として語られていたりする。これは実際によく写らないということじゃなくて、スマホカメラのペタッとした味気ない描写に対して、フィルム写真のそれは「雰囲気がある」ということなんだろうと思う。
そう、多くの普通の人にとっては、むしろスペックという数値よりも「雰囲気」が大切なのである。いや、ほとんどのひとが世の中のあらゆることを無意識に「雰囲気」で判断していると思う。好きとか嫌いとか、気持ちいいとか気持ち悪いとか。雰囲気とは抽象的であやふやだとかじゃなく、雰囲気こそ人の心を大きく揺さぶるものさしだと思う。
実際、カメラを趣味にしている僕も誤解を恐れずにいえばスペックにはさして興味はなく、カメラにも、そして写真にも雰囲気をいちばん求めてるし、それが写真描写とカメラに惹かれるいちばんの要因だったりする。「雰囲気」というと、なんか専門性に欠けるいかにもアマチュア的思考と思われがちだけど、その「雰囲気」の重要性が再認識され始めてるんじゃないかと、ちょっと感じたりしているのである。
この「雰囲気」こそ、その中身を紐解くことはむずかしいが、僕はそこに「クラシック」性のようなものがヒントとしてあるんじゃないかと思ってる。人の脳がクラシックと感じることが、写真やプロダクトに人間味やゆらぎ、曖昧さなどをまぶしていくような感覚。そして、それがこの超デジタル社会において、必要不可欠になりつつある気配。
そうやって考えていくと、カメラや写真がスマホカメラでは撮れないプロ的思考に進化していくのと並走して、その真逆とも言える雰囲気重視の写真とカメラの方向もあるんじゃないかって。そして、むしろこの後者の在り方のほうが、世の中の空気をちょっと豊かなものにするんじゃないかって。
と、特に考えがまとまっていない状態で書き始めてここまで好き勝手に綴ってきたけど、2023年の始まりの日だし、こういう脳みその中の思考を燻らせながら、なんとなく今の考えを記しておくのもいいかなと思って書いてみた。
世の中がなんとなく白黒はっきりさせようとする風潮があるなかで、もう少し曖昧さというか隙というか「雰囲気」みたいなことに注目してみる。写真やカメラがそんなことを体現してくれればいいなと個人的には思っている。(たぶん、この話は今後もつづく。)
★今日の注目商品をチェック!
はじめまして。そして、明けましておめでとうございます。
雰囲気重視、クラシック性という話、同感です。文具界では「くすみカラー」が一大ブームになっていて、それもやはりパキッとした色より「雰囲気」重視の傾向かな、と思います。
フィルムが雰囲気重視だと思っていいカメラで撮ると、特に紙焼きしたら、意外とバッチリ鮮やかに写ってビックリするんじゃないかな、とも思いますが。(富士のクラシッククロームで写した方がよっぽどイメージが近い気がします)
そんなことより、カメラよりフィルムを以前の値段で買えるようにして…富士フイルムにこの流れに乗ってほしいと切に願っております。自社じゃ無理なら、技術を継承して中小が生産するようにしたらいいと思うんですよね。
明けましておめでとうございます。
さて、人間の目を画素数で言うなら2億5千万画素だそうですが、全体をその解像度で認識するのは不可能で、画角で言えば2度ほどの狭い所を800万画素くらいで認識し、そのポインを頻繁に移動して全体を掴んでいるそうです。最近私が使っているデジタル一眼レフカメラは、フィルムに追いつけ追い越せ的な時代の820万画素のEOS 20Dと1000万画素ちょっとのNIKON D80ですが、フィルム的な所が残っていてとても心地良いです。
1600万画素のPENTAXも持っていますが、最近は全くと言っていいほど出番が無くなりました。