ローライフレックス。この響きはフィルムカメラを始めた頃からどこか気になる存在で、常に心のどこかに「いつかは」みたいに潜んでいたと思う。中古カメラ屋をのぞく度に必ず中判カメラコーナーも“一応確認する”みたいなね。そんな僕の前にようやくピンときた個体が現れた。それがローライフレックスの中でも小ぶりでひときわチャーミングな“ローライフレックス・スタンダード”だ。
たまたま立ち寄ったいつもの中古カメラ屋のショーケースに新たに加わっていたこのスタンダード。その横に並ぶ他のローライフレックスたちより明らかに小さくて、サイズ感的にはローライコードと同じくらいかな。けれど、カメラには何より軽快さを求める僕にとっては、このコンパクトさは最大の魅力に見えた。アール・デコ調のロゴも実に小粋で独特の存在感を放つ。
札を見ると委託品だったから整備のゆきわたり具合は気になったけど、見るからに綺麗なボディだったから、なじみの店員さんに頼んでショーケースから出してもらう。僕は知識的にカメラを見る目はないから、店員さんに程度や完動品かどうかなどをひと通り見てもらう。すると、レンズも綺麗だし、絞りやシャッタースピード、ピントなんかも小気味よく動き、シャッターも軽快に切れる。直感的にイケそうな気がした。
何よりウエストレベルで眺めるファインダーの中の世界にうっとりした。なんとも味のある光景がそこには浮かび上がった。これが二眼レフかと。これで撮ったら、現像しなくても世界が変わるような何かがそこにはあった。レンズキャップはなかったけど革ケース付きで、装着してみるとこれもまた品が良くカッコいい。ついでにと他のローライも触らせてもらったけど、佇まいやフィーリングは明らかにスタンダードが良くて。ここまで直感で良いと感じるのであれば、あとはもう実際に撮って確かめるしかないと。その場でブローニーフィルムも手にとり一緒に我が家へ帰宅することとなった。
お店の人に聞いたりネットで調べてみると、この「スタンダード」とは120フィルムになった最初のローライフレックス。レンズを見ると僕のはテッサーF3.5(1932年に発売された当初のものはf4.5とf3.8)だから後期型らしい。とはいえ、とても1930年代に登場したとは思えない小綺麗なボディとレンズ。革ケースについていた取っ手は短めでネックストラップとして首からぶら下げるわけにはいかないけど、どうせカメラバッグに入れて持ち歩くからそこは平気かなと。手に持って構えると、ピント合わせのダイヤルが左側についていて、右利きの僕には少しぎこちない操作に思えたけど、これも慣れだろうと。あとはきちんと写りさえすれば上出来の品に思えた。
ひと通り操作方法は店員さんに習ったけど、フィルム装填とか後の所作はネット動画なんかで調べるしかない。あとはもう実際に試し撮り、現像をしてみるまでのお楽しみ。Twitterでフィルムカメラつながりの人の中にも何名かスタンダード使いの人もいるし、中古カメラ屋の店員さんもいるから、何か分からない壁にぶつかってもなんとかなるんじゃないかと笑。あとは週末を待つのみ。あ、そうそう、ブローニーのリバーサルで撮るのがずっと夢だったんだけど、店員さんいわく最初は普通のカラーやモノクロで露出感覚に慣れてからリバーサルに移行していったほうがいいとごもっともなアドバイスをもらい笑、まずはFujifilmのPRO160というブローニーフィルムを購入してみた。週末まではひたすら眺めるだけの日々だけど、それでも心満たされるワクワク感がこのカメラにはある。僕の最後のピースが埋まった、そんな感覚の歓びがある。