日本で初めて開発された一眼レフ AsahiflexカメラメーカーのPENTAX（RICOH）が「フィルムカメラプロジェクト」なるものに挑戦し始めていることをご存知だろうか。カメラをやってる人なら聞いたことがあるニュースだろう。
フィルムカメラが若い人に人気なのはあいかわらず続いているように見えるが、肝心のフィルムのほうが品薄や値段の高騰で、このPENTAX フィルムカメラプロジェクトを冷ややかに見る目も見受けられる。
でも、世の中なんでもそうだけど、イノベーティブなことは「やってみないと、何も起こらないし、始まらない」。
そして、僕が感じるのは、少しずつだけどこのプロジェクトが始まって、なにかしらのうねりであり胎動が起こっているような気がするのだ。
まずは、そのPENTAX フィルムカメラプロジェクトの発起人であるPENTAX〈リコーイメージング）の人たちの声をお聞きいただきたい。
そんなユニークな動きに注目してBARFOUT！がこのプロジェクトの過程を連載で追いかけようということで、女優でカメラユーザーでもある上白石萌歌さんが連載企画に参加するなど、心のどこかで「それいい！」と賛同する人たちの輪が広がりつつあるのだ。
たしかにフィルムがこれから飛躍的に昭和のフィルム時代のように復活するとは考えづらい。けれど、フィルムで撮る写真というのは「過去のものというよりは、写真文化の一ジャンル」であり、写真の表現方法としてはその選択肢のひとつとして残り続けてほしいというのが、多くの人の願いではないだろうか。
そんなフィルム写真の表現者のひとりとして、フィルムで撮る人たちにはおなじみの写真家さんもこのプロジェクトの仲間として動き始めた。岩倉しおりさんである。
岩倉しおりさんの撮られるフィルム写真をInstagramやTwitterで目にして、思わず「私もこんな写真が撮りたい！」とフィルムカメラを手にした人も多いと思う。故郷の香川県をフィールドに、日常のなにげないシーンをフィルム写真で儚く美しく描くその姿は、多くの人が共感し、何十万人という人たちが彼女のSNSをフォローして時間を共にしている。
そんな岩倉さんがずっと愛用していたフィルムであるFUJIFILM業務用100が何年か前に販売終了になり、岩倉さんがその寂しさをSNSで呟かれていたのを覚えている。実は僕もFUJIFILM業務用100を常用フィルムにしていたんで、同じように「フィルムのこれから」をなんとなく悲観的に感じて落ち込んだのだ。
フィルムの需要がどうしても落ち込んで廃番になるものが出てくるのはしょうがない。でも、一方で新しい芽が出ていることもある。モノクロフィルムでおなじみのILFORDが先日、新しいフィルム製品の登場を発表したのだ。
🎉カラーネガフィルム「ILFOCOLOR Vintage Tone」新発売のお知らせ🎞️
その名の通り、どこか懐かしくノスタルジックな印象を与える仕上がりになり、古い街並みなど時代を感じさせる被写体との相性がよいフィルムです。
現代の風景を撮っても昔の雰囲気で写り、ギャップをお楽しみいただけます。 pic.twitter.com/AINtxU6LsU— ILFORD JAPAN (@IlfordJapan) June 29, 2023
ILFOCOLOR Vintage Toneというカラーネガフィルムを新発売するというニュースだ。感度400のフィルムがなにかと少なくなっていたなかでこれはとても朗報で、Twitterなんかを見ていても多くの人々が感激のリツイートをされていた。
そして、そのうねりがまたひとつの結びつきを生んで、こんどPENTAXフィルムカメラプロジェクトと岩倉しおりさん、そしてILFORD JAPANさんの三者が手を組んで、岩倉しおりさんのフィルム写真展を開催するというのだ。
t.co外部リンク— ペンタックス (PENTAX by RICOH IMAGING) (@ricohimaging_jp) June 19, 2023
こうして、なにか点と点がつながり始めている様子を見ると、こちらまでワクワクするというか、なにか勇気や希望のようなものをもらえる。そりゃ、この先のことは誰にも分からない。けれど、分からないからまず動いてみるというのはあると思う。なにか動いてみることで、化学反応が生まれるのだ。
実は僕もPENTAXフィルムカメラプロジェクトの一報を聞いてから、やがて出てくるかもしれないPENTAXの新しいフィルムカメラのために、フィルム時代のKマウントのレンズを何本か買い揃えた。いまはデジタルのK-3 Mark IIIやK10Dに装着して楽しんでいるが、本命は「その日のために」である。
僕の中にも、なにかが動き始めているのである。
なにも懐古主義でそうした動きに賛同しているのではない。フィルムを古いものとして捉えているというよりは、時代に左右されない普遍の表現文化のひとつとしてフィルムが存在し続けてほしいと思うし、若い人たちにはそれが新鮮で「新しさ」だったりもする。
表現とは、できるだけ多様な選択肢があったほうがいい。「らしさ」とは個性と個性の掛け算の数だけ可能性を生むから、多様性とはやっぱり大切なのだ。フィルム表現もまたそのひとつ。この小さなうなりが少しずつ新たな結びつきを生むことを願って。時代は人々の思いや動きが動かしているのである。
★今日の注目注目商品をチェック！
