写真とは

写真家・菅原一剛さんの本「写真がもっと好きになる」を再び読みたくなった。

菅原一剛さん著「写真がもっと好きになる」

この本は、僕がフィルムカメラを始めた頃に買って読んだ本だ。このタイトル「写真がもっと好きになる」の本は二冊あって、ひとつはこのタイトル通りの本だけど、もうひとつは「写真を観る編。」と副題がついたもの。つまり、続編だ。

前者は菅原一剛さんがカメラと写真のある人生の良さを書かれたもので、第一章はまさしく「カメラと一緒に歩いてみよう」というタイトルから始まる。そう、これは、これまでの人生、あまりカメラを持ち歩いたことがないビギナーの人なんか向けに書かれた本といってもいい。それもそのはずで、この本の内容は、もともとは糸井重里さん主宰の「ほぼ日刊イトイ新聞」の中で人気シリーズであった同タイトルの記事を一冊にまとめたもの。ごくごく普通の人に写真のおもしろさをユニークに説いてくれている。(とはいえ、そこは菅原一剛さんという一流の写真家さんが書かれているから、もしかしたらベテランのアマチュア写真家の人ほど、初心に帰る意味で読まれるといいかもしれない)

僕はこの二冊、紙の本を持っていてどちらも好きなんだけど、どちらかといえば「写真を観る編」のほうがよく読み返すかな。この続編のほうは、菅原さんの目線で偉大な写真家たちの作品や人生観、そこに込められた思いみたいなものを綴ってくれている。ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ダイアン・アーバス、ウィリアム・エグルストン、ロバート・フランクetc.…まさに錚々たる写真家のことが、小気味いいコラムのような文章量で書かれているから、再読するにはとてもいい。

菅原一剛さん著「写真がもっと好きになる」

僕はカメラが好きだけどスペックや機能のことは面倒くさがって、取説なんかも困った時しか読まない。そんな自分流みたいな感じなんで、写真のことについてもしっかり勉強したことがない。まあ、趣味でやってるアマチュア写真愛好家だからそれでもいいんだけど、心の中で不勉強な自分にどこか自己嫌悪というか負い目みたいなものも感じていて、大量の写真集を買う代わりにこうした写真解説的な本を見て、自分の中で少し埋め合わせをしている。そういうんじゃダメなんだけどね、本当は。

そんな僕のダメな話は置いといて、僕は写真よりも文章のほうが少し語れるかもしれないから、とある一節のところだけ、ここで触れておきたいと思う。それは、この本のロバート・フランクの章に出てくる菅原一剛さんの言葉なんだけどね。

「写真を撮るとき、とかく慣れてくると、撮る前からいろいろと“絵づくり”を考えてしまうことが多いのですが、きっと、コンセプトなんていらないのです。テーマだって必要ない。写真を撮るときに一番大切なことは、ただひたすらに、自分の中に芽生えた感情に対して正直にシャッターを切ってみることではないでしょうか。」

これは前後のある文章の一節なので、この一節だけを捉えて語るものでは本来ないけど、僕がフィルムカメラを始めた頃の無垢な感情から変な方向へと迷い込まないように、こうしてこの本を再読している、まさにその象徴的な大切な一節だと思っている。

写真にしても、仕事にしても、家族にしても、何にしても、人間とは慣れとか経験が時に本質を邪魔することがある。そりゃ、突き詰めることは大切だけど、写真に関していえば「そこにある意味、その人のすべてが写り込む」というものだと思っていて、そこに素直に向き合えるかどうかが写真の気配を大きく変える一番の要素だと感じている。

菅原一剛さん著「写真がもっと好きになる」

これも菅原一剛さんが言ってるけど、この本に出てくる大御所の写真家たちも含めて「すべての写真は日常の中から生まれている」と。この本とは、そういう本です。テクニック的な本ではないし、実は大御所の写真家の解説本でもない。僕は普通の写真好き、カメラ好きの人間たちが、ほんの些細な日常を撮ることに対して、語りかけてくれている。そういうアマチュア写真愛好家へのエールのような本です。

カメラ通とか写真通とかそんな風になる必要はなくて、それよりもただただ、シャッターを切ることに無垢でありたい。そんなことを思い起こしてくれる二冊です。まだ読んだことがない人は、よかったら目を通してみてください。きっと、なにか心が晴れるような気持ちになると思うので。

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