フィルムはたしかに高価になったけど、無くなったわけじゃないし、まだ娯楽費をやりくりすれば手に入れられる価格ではある。現に僕は数日前、クラシックカメラのイベント会場でかわうそ商店さんから2本のフィルムを購入した。
35mmカラーネガフィルムの27枚撮り2本で5,000円を超えていたので、たしかに安くはないのだけど、じぶんでも意外に思うくらい妙に心がおだやかで晴れた気分だった。
それは、かわうそ商店さんとの会話のやりとりのおかげも大きい。どうせなら今まで使ったことのないフィルムで、せっかくならかわうそ商店さんだから買えるようなフィルムがいいと無茶ぶり的な相談をすると、気さくで丁寧にいくつかのフィルムの特徴を説明してくれた。
ご自身で試し撮りしたカメラや作例写真を見せてくれながらの説明なんで、同じカメラユーザーさんから実体験を聞いているようで、じぶんの日常の撮影シチュエーションもイメージしやすい。
春になったらライカM3で桜を撮りたいと話すと、赤みの出具合なんかも説明してくれて、結局僕は比較の意味も込めて2本のフィルムを購入することにした。
さすがに以前のように10本まとめてのような大人買いは気分的にできないけど、こうしてカメラ屋さんやフィルム売り場に立ち寄った時に少量のフィルムを買い足していけば、なんとなく家にフィルム在庫もたまってくる。
ちなみに僕の自室にも135と120を足して、おそらく70〜80本ほどのフィルムがあるんじゃないだろうか。むしろ、使いきれないくらいで、だんだんと期限切れのものが増えつつあるけど、なんでもかんでもフィルムで撮ることはせず、「ここはフィルムで撮りたい」と思うシチュエーションの時だけ使うようにしている。
日々の散歩カメラはもっぱらデジカメが相棒だ。特に変わり映えしないいつもの道なんかは、光と影を実験的に撮ったり、カメラのセッティングやレンズの味をテストして楽しむような使い方なんで、こんなシチュエーションではフィルムはもったいなくて使っていない。
そんなペースだからフィルムカメラも必要最小限の二、三台ほどあれば事足りるのだけど、こればかりは所有カメラに愛着がありすぎて、我が家のフィルムカメラの台数はほぼ減っていない。ちょっと台数を言うのは恥ずかしいので、ここでは伏せておきたい笑。
でも、いまはフィルムで撮りたい時はほぼライカM3かな。もう少しコンパクトに持ち出したい時はバルナックIIIaやRollei35、Konica C35を連れ出すけど、フィルムで撮る機会がそれほど多くない分、どうせならM3で撮りたいという思いがある。
レンズも以前はズミクロンやズミルックスなども使っていたけど、いま手元に残しているライツの常用レンズはMマウントのエルマー50mm f3.5のみ。よく「エルマーに始まり、エルマーに終わる」と言われるけど、まさに僕もその状態に落ち着いた。
それほど多くないフィルムで撮るチャンスを、できれば決まったボディとレンズの組み合わせで試したい、深めたいというのが、ここにきての僕のフィルムとの向き合い方だ。
ふだんはデジカメがあるし、デジカメに不満があるわけでもないんで、全面的にデジカメにシフトしてもいいんだけど、思い立ったら「フィルムで撮ることもできる」という環境は、どこか心の中に余裕をもたらしてくれていると思う。それだけでも、僕にとってフィルムの存在は大きいのだ。
最近ちょっと思うのは、フィルムもできれば国内唯一のフィルムメーカーとして踏ん張ってくれている富士フイルムのフィルムを購入したいなということ。たまに珍しい海外のフィルムを使いつつも、ベースは富士フイルム製品にしていければなと。
以前はFUJIFILM業務用100が常用で、それが販売終了になってからKodakのフィルムを使うことが多く、家にあるストックもKodakがまだまだけっこうあるんだけど、徐々に富士フイルムを増やしていけたらなと。
最近、フィルムの話題となるととかく値上げのことが多くて、なんかそのたびに少しネガティブな意見などが飛び交うのだけど、かわうそ商店さんからフィルムを購入した時のようなあの豊かな心境とか、いざという時にはフィルムで撮れる心の余裕みたいなものにもっと目を向けられるといいなと思っている。
フィルムのよさは、やっぱりその人間味みたいなものかもしれないなあ。
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