ふたつのブリッジになったのは「露出」と「フルマニュアル」。何を今さらと言われそうだけど、僕の中ではこの写真をやるならあたりまえのキーワードでもあるふたつの言葉を意識し始めたのは、半年前に始めたフィルムカメラから。それ以前も三年ほど前からデジタルカメラはやっていたんだけど、恥ずかしながらその時はこの「露出」と「フルマニュアル」という言葉を撮影する際に思い描いたことはほぼなかった。
初めてデジイチを手にした時は本なんかを読んで「絞り優先モード」がいいということだけは覚えて、そうかそれが玄人っぽいのかとか思って、ひたすらそれで撮ってたなあ。最初に明るい単焦点レンズを買ったから、ボケが楽しくて絞り解放でばかり撮ってた。そう、僕の中ではF値というのはボケの度合いというくらいにしか認識がなかった。ISO感度なんかもオートにしてたから、露出補正ダイヤルをちょこちょこ調整しながら撮れば、今の最新のカメラなら撮れちゃうんだよね、なんとなくよさげな写真が。あとはシーンモードとかプログラムモードもあるから、大抵の写真はスマホカメラ感覚で撮れてしまう。それがちょっと精度高く撮れる、そんなくらいにしかデジイチを使いきれていかなかった。
ところがこの春にひょんなことからフィルムカメラを手に入れて写真を撮り始めてみると、もうなんというか写真撮影の概念が根底から覆されたというか、「露出」と「フルマニュアル」というキーワードを通過せずには写真は撮れないということに人生で始めて直面した。絞りとシャッタースピードの組み合わせによって適正な露出を確保するってこういうことなのか!?とか、デジタルカメラってこんなにも機械がオートでやってくれていたのか!?ということがやっと分かるんだよね、フィルムカメラによって。それはもう、カメラともう一度始めて出会ったというくらい新鮮だったなあ。
そうやってカメラを操ること、写真を撮ることの根本的な仕組みが分かってくると、もう一度デジイチをやり直したい気持ちが出てくるんだ。フルマニュアルで露出をじぶんで決めながら撮ってみたいと。そうして、再び手に入れたデジイチでいままさに「露出」を体感露出で決めながら、「フルマニュアル」で絞りとシャッタースピードを調整してデジタル撮影を楽しんでいるところ。これがすごく学びになるし、なにより楽しい。デジタルならどれだけ失敗してもフィルム代や現像代はかからないから、それこそ大量に露出の試し撮りができる。僕の場合だと、ふだんフィルムは感度100が多いから100の時の体感露出は大体分かってきたんだけど、最近使い始めた感度400のフィルムの時はまだまだ体感露出の感覚が身についていない。だから、こうしてデジイチにMF単焦点レンズをつけて、感度400固定でフルマニュアルで露出を決めて撮ると、すごく勉強になる。その場で露出確認や写真の撮れ具合もすぐ確認できるからね。
感覚的には、フィルムを経て、もう一度デジタルをやり直したい、そんな気分。ひと昔前のデジイチからやり直して、本当の意味でステップアップしていけたらなと。ここのところフィルムカメラにずっぽりハマって、デジタルの方はあまり頭になかったんだけど、フィルムを経たことでデジタルがもう一度、カタチを変えて身近なものになった。フィルムとデジタルは別物といえばそうだけど、「露出」と「フルマニュアル」というブリッジがあれば、なんというか同じ写真の延長線上のなかで楽しむことができる、そんなことをいま感じ始めている。