フィルムカメラ

映画 写真家ソール・ライター「急がない人生で見つけた13のこと」について。

尊敬するある人に「ソール・ライター展」をすすめられた。だけど、今のところその展示会の街に足を運ぶ予定がない。でも、少しソール・ライターなる人のことを調べてみようとネットを検索してみると、その映画があることを知る。では、試しにまずは映画を観てみようと。(興味のある人はいくつかの動画視聴サイトでレンタル視聴などできので、ぜひ。)

ソール・ライターは写真家で、1940年代から絵画のような豊かな表現力でニューヨークを撮り続けたカラー写真の先駆者で、ハーパーズ・バザーやヴォーグなど有名ファッション誌の表紙も飾った伝説の写真家。でも、芸術性より商業性が強くなったファッション写真に馴染めなくなり、次第に表舞台から姿を消してゆく。成功や名声を望まないソールは個人的な作品を一切発表しなかったが、2006年、ドイツ・シュタイデル社から初の作品集が発表されると、80歳を超えた写真家の再発見は世界中で熱狂的に迎えられる。映画は、そんなソール・ライターの晩年に密着したドキュメンタリー。脚光を浴びることが苦手で、イーストビレッジでの静かな暮らしを愛した写真家に、30代の若き英国人ディレクターが「急がない人生で見つけた13のこと」をたずねる。(〜映画紹介文より抜粋〜)

当然、僕も彼の撮った写真が気になった。でも、この映画は写真を紹介するものではない。もちろん、劇中にいくつかの写真が紹介されたり、映像にプリント写真やネガが映し出される。でも、大事なのはそこじゃない。彼の撮った雨の日の写真、印象的な傘、よく見るとどこか注意せずにはいられない様子の写り込みなど、それはそれで印象的だけど、しぶんに無理をせず、しぶんが美しいと思うものを何年も何年も撮り続けるその人生観が写真に何かを宿らせる、そんな風なことが僕の読後感のようなものとして残った。作り込まれた光景を撮るのではく、無秩序の光景を求め、自らもそれを形成する無秩序のひとつであり続けようとした。たしかに彼の写真は素晴らしいけど、それ以上にそれらを撮ろうとしたソール・ライターという人間の心持ちみたいなものにシャッターボタンがセットされていることを僕は強く感じた。いい写真かどうかは大した問題じゃない、大事なのは撮りたい心だ。僕にはそういうメッセージに思えた。あまりあらすじ的な感想を書いてしまうと申し訳ないので、映画の感想はこのあたりにして。

そんな彼の写真展がBunksmuraザ・ミュージアムで開かれている(〜2017.6.25)まで。映画のほうはそういう写真を撮る感情の話だけど、写真展ほうは彼のアウトプットに集中できるようだ。行かれた人たちのコメントはどれも静かに、でも圧倒的に心を鷲掴みされたことが伝わるものばかりだ。どうかな、会期中までに僕も足を運べるかな。こうして先にドキュメンタリー映画を観てしまったことがどのように影響するかは分からないけど、写真展が観られるならその数十分間は映画で見聞きしたことは忘れて目の前の写真から感じることだけに集中したい。たぶん、映画の中で観たソール・ライター氏なら、同じようなことを言うような気がするから。

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POSTED COMMENT

  1. sachi より:

    記憶さん!「急がない人生で見つけた13のこと」ご覧になったのですね。わたしは見ていませんが、投稿を拝見してそのエッセンスがとてもよく伝わってきました!
    記憶さんが受け取った、いい写真かどうかは大した問題じゃない大事なのは撮りたい心だというメッセージに強く共感するし、わたしは記憶さんはいつもそのような姿勢で撮られているのだろうなという印象を抱いてきました。ある意味ソール・ライターに似ていらっしゃるなーと。その彼の心持ちこそ記憶さんならきっと共鳴されるだろうと思ったポイントであり、それをすでに受け取られた今、もう写真展に足を運ぶ必要もないかも?笑
    彼は朝起きるとまず台所で小さな画用紙に好きな色をのせて絵を描くんだって(うろ覚えですが場内のビデオでやっていたような)。そういうところが本当に好きだし、生き方として理想だなぁと思いました。

    • kiokucamera より:

      あ、sachiさん海外からですか^ ^。いつもブログに目を通してくれてありがとうございます。そうなんです、とりあえずはと映画を観てみました。ドキュメントなのでいいとこばかりじゃなくて、彼の苦悩みたいなものも滲み見えて、そういう意味では写真から想像するより何か深いものを感じ取ることができたかもしれません。写真展のほうは、今週は東京にも顔を出すのですが港区〜横浜界隈なので、渋谷はちょっとむずかしいかなーと。今回は無理かもしれませんが、僕の街にも巡回展が来るんじゃないかとどこかで期待したりもしています。ソール・ライターに似ていると言われるとお世辞にしても舞い上がります^ ^。背伸びせず僕らしいリズムで写真のある生活を楽しんでいきます!

      • sachi より:

        はい。帰国しましたー^ ^
        映画には彼の苦悩まで描かれていたのですね。何となく、写真展で掲示されていたパートナーへの弔辞がとても心に染みたことを思い出しました。互いに愛し合い奪い合い傷つけ合った日々について書かれており、ちょっと切なくなりました。

        記憶さん東京在住だとばかり思っておりました!思い込みって恐ろしい。気安く言ってしまって申し訳ないです。巡回展がそちらに行くといいなぁー!

        • kiokucamera より:

          僕のホームタウンは福岡です。特にふれていないわけでもないのですが、大々的に言うこともなあかなあと思っているので、そう思われてる人も多いかもしれませんね^ ^。東京はけっこう行き来してるから写真も東京のスナップが多いからかなあ笑。過去に二度ほど東京生活もしていたので、僕には馴染み深い都市でもありますしね。あ、sachiさんの写真はアート性に惹かれつつ、もしや21mmかなあとか考えて見てました^ ^。お帰りなさい☺︎

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