中判カメラってジワジワくるよね。ローライフレックス・スタンダードのある週末。
もともと僕は中判がやりたいというわけではなかった。他のカメラも比較的そうなんだけど、まずカメラが気になったんだよね、このRolleiflex Standardというカメラが。とにかく二眼レフのローライフレックスに憧れがあった。その見た目のルックスとか、川内倫子さんが使ってるとか、そういうイメージね。
でも、過去記事を追いかけてもらえると分かるけど、初めて試し撮りに連れ出して、自然を目の前にファインダーをのぞいた時に、その映画のような、絵本のような世界観に魅了されたんだよね。言葉にするのはむずかしいけど、今まで生きてきて体験したことのない、気持ちの中に感動がジワジワと染み渡っていくような感覚に包まれた。やわらかい夕陽のさしこむ美しい光景を前に、しばらく時間が止まった気がした。
以来、僕はだんだんとこの中判という世界に少しずつ、いやでも確実に力強く惹かれていく。デジカメがこれだけ高機能で便利な時代に、何を好んでこんな見た目はもちろん操作性もレトロなカメラで、12枚しか撮れない高価なフィルムを使って写真を撮らないといけないのか。理屈では説明はむずかしい。もう体験してもらうしか、その感動を共有するのはむずかしいんだ。
実は僕はこの10連休のゴールデンウィークの直前にもう一台の中判カメラとしてHasselblad 500C/Mを手に入れたんだけど、その火付け役になったのは、その数日前に撮ったRolleiflex Standardとのひと時だったかもしれない。久しぶりにブローニーフィルムを入れて撮った心地よさは格別で、たしか屋外でフィルム交換もしてカラー&モノクロでフィルム3本ほど撮った。撮り終わった時に、なんとなく次の中判カメラを手にしようと思い至ったのだと思う。
中判カメラの魅力は、その大きな写真ならではの情報量の多さというか緻密な絵だと思うんだけど、そういう物理的なメリットのことよりも、ファインダーの美しさであり、紙状のフィルムに込めるアナログ的な感触であり、とても人間らしい撮影所作やゆるりとしたじかんのような気がする。ローライフレックスとハッセルブラッドの違いはあれど、この中判に抱く心地よさの種類は僕の中ではどこか共通している。
そのゴールデンウィーク前にローライフレックス・スタンダードで撮ったブローニーフィルムのうち、いま手元に現像があがってきたのはカラーの2本、24枚(実は僕のスタンダードは13枚撮れるから、計36枚なんだけどね)。モノクロフィルムのほうは、あがってきたらここに追記していきたいと思う。モダンな感覚のハッセルブラッドに比べると、ローライフレックス最初期のスタンダードは少しおっとりした存在であり描写だが、僕はこの世界もたまらなく好きだ。
こんな、世の中のすべてがハイスピードな時代に、これだけゆっくりと時間を刻むプロセスのものはそう多くない。そういう意味では、日々振り落とされそうなくらい忙しい人にこそ、中判カメラを試してほしいと思う。少し手間をかけないと得られない幸福というのは確実にあるんだ。そして、それはそんな途方もない遠いところにあるのではなくて、けっこう身近な世界にあるんだ。あ、そうそう、ゴールデンウィーク中にハッセルで撮ったフィルムは、まだ現像からあがってきていない。その話はまた後日ということで。