フィルムカメラに興味がある人の多くはスナップ写真に興味があるということなんじゃないかと思うけど、どうだろう。もしそうだとしたら、レンジファインダーという選択はかなりおすすめだ。軽量コンパクトでミラーショックもなくシャッター音も比較的静か。街の中に溶け込んでスナップシューティングに没頭できる。世の中にはいろんなカメラがあるけど、レンジファインダーは紛れもなく軽快なスナップシューティングのために生まれてきたカメラだと思う。
となれば、一気にライカという選択肢が現実味を帯びてくる。フィルムカメラを始めようかという人がいきなりライカというのは如何なものかと思うかもしれないけど、ライカは確かに圧倒的なクオリティとデザインフォルムを纏った名機ではあるけど、幸福なことに現代では十分手の届く価格帯で巡り会うことができる。フィルムカメラを何台か所有した暁にフィルムライカにたどり着く、その複数台のカメラやレンズ代があれば余裕でバルナックライカと沈胴式エルマーが手に入るだろうし、レンズがあればM3だって射程圏内に入ってくる。
僕はいくつかのカメラを所有した暁にフィルムライカにたどり着いた方だけど、その僕が経験者として語るとするならば、いっそ最初からフィルムライカに行ったほうがいい。ライカがその誕生から100年が近づいている中で、今もこれだけ愛されているのは単にブランド力だけの問題じゃない。そこには、スナップシューティングを考え尽くした当時のバルナック氏ほか匠たちの火傷しそうな熱い思いが込められている。それは、ある意味カメラ生誕のすべてが詰まっていると言ってもいい。このカメラを触ることで、カメラの歴史や存在理由が理屈抜きに伝わってくる。たくさんのカメラを所有するのもアリだけど、僕はいっそバルナックライカとM型ライカの原点M3を所有して、その世界を深掘りしてみるのも相当アリなんじゃないかと思う。
僕は人生の半分を超えたような遅い歳にフィルムライカに出会った。考えてみると人生は長いようで短い。その日々の中で何かを深めようと思うと、実はそれほど時間はないんだと近ごろつくづく思う。だとするなら、何事も深く楽しもうと思えば始めるのは早い時期であるほうがいい。若ければ若いほど、このフィルムライカに触れて、一枚でも多く撮り、その35mmフィルムカメラを生み出した世界を堪能し尽くしてみたほうがいいと思うんだ。どうだろう、飛躍しすぎた考え方だろうか。でも、僕がもし数十年前に戻れるなら、この二台のフィルムライカを手にすることから写真を始めたいなと思う。すべてを、この二台の原点から。