これは、他の人はどうなのかな。僕の場合は、基本的に「太陽のある日の、早朝と夕方」が、あえてフィルムで撮りたいと考える撮影条件だ。
もちろん、室内だとか人を撮る記録写真としてなら昼間もカメラを向けるけど、基本的に一人でスナップを楽しむ時は、この「太陽が出ている日」「早朝」「夕方」がそもそも好みだったりする。
それは、やはり太陽光線が斜めに差し込む早朝か夕方が、光と影を追いかけるのが楽しいからだ。
もちろん、撮る光景そのものが特徴的であれば、光と影をそれほど意識しなくても印象的な「シーン」は撮れる。
でも、常にそんな劇的な光景がある日常ではないので、それでもシャッターを切りたい僕の被写体は、おのずと「光と影探し」になる。
家の近所を散歩する時は、ほぼその状態だ。いつもの見慣れた風景だから、特に大きく変わり映えする光景ではない。
でも、光と影だけは、季節と時間帯で毎朝、毎夕、微妙な変化を感じさせてくれる。道端でも目を凝らせば、光を写し込みたいと思う場面に出くわすことができるのだ。
僕はこれがとにかく楽しい。他の人から見るととても些細な行動だろうけど、ファインダーの中で光と影探しをしている本人としては、ニヤリと静かに楽しめる感じが実に良い。
この朝夕の太陽の光というのは、フィルムで封じ込めるのが美しい。
デジカメなら白とびや黒つぶれするような角度でも、フィルムなら太陽光をやさしく包み込んでくれる気がしていて、そういうイメージができる日はただの散歩でも貴重なフィルムをカメラに詰める。
そう、フィルムはいま、貴重だ。フィルムが今よりもずっと安かった頃は、それこそ四六時中フィルムで撮っていた時期もあるけど、いまは流石にそうはいかない。
シャッター好きを自負する僕が、すべての写真をフィルムで撮りだしたら、あっという間に僕の財政は破綻すると思う。
だから、朝、窓の外を見て「お、いい光。フィルムで封じ込めたい。」と直感的に感じる日に、ゴソゴソとフィルムをカメラに装填する。ちょっとニヤけながら。
逆にいえば、デジカメも素晴らしい。太陽のない日でも、極端にいえばけっこうな雨の日や雪の日でも、カメラを持ち出して撮ろうと思える。
オーバーめな写し方に強いフィルムに対して、アンダーめな写し方に強いデジカメは、それはそれでフィルムとは異なる包容力を感じる。
んー、つまりフィルムもいいし、デジカメもいいという、やはり僕はカメラ博愛主義者で、決して嘘ではなく嫌いなカメラというものが無い。
お店で直感的に選んだカメラやレンズは、実際に撮ってみると毎回感動ばかりで、本当に嫌いになりようがないというか、もちろん欠点を感じることもあるけど、大抵はそれを挽回してお釣りがくるような良さを発見する。
どんなカメラやレンズでも、いつの間にかその機材に適した撮り方をじぶんで見つけて、その範囲の中で規制を逆手にとってというか、なんでもそれなりに楽しむことができると思ってる。
まあ、失敗写真をかなり量産もするけど、写真ばかりは失敗写真も含めて量を撮らないと見えてこないことばかり。
つまり、失敗が失敗じゃないし、フィルムに関していえば特に「フィルムに失敗写真は存在しない」と考えている。
いや、構図だのピントだの露出だのズレまくってる写真はたくさんあるんだけど、なんというか、フィルムだとそれが失敗写真に見えなくて、なんか妙に味があったりする。
若い人たちがフィルム写真を「エモい」という気持ちが、なんとなくおじさんでもわかるんだ。
そうそう、そもそも現像するまでフィルム写真は確認できないから、撮ってる最中は失敗したとか考えもしないし、現像あがりの写真を見る頃にはいろいろ忘れている笑。
時間を置いて再会するフィルム写真は、その時差のワクワク感もあって、失敗よりも懐かしさみたいなものが勝るというのもあるかもしれない。
フィルムはコストがかかる。けれど、無理せずにほどよく使えば、やっぱり日々の歓びにそっと寄与してくれる。
特に、一日のスタートである早朝に、ゆっくりとフィルムをカメラに詰めて、想像だけど「いい光を封じ込められた気がする」という気分で一日を始められたら、それはヨーグルトを食べるより健康にいいかもしれない笑。
夕方の光はほんと一瞬だから、早朝から午前中にかけてそのまま撮影できる感じとは異なるんだけど、でも一瞬だからこそ尊さは朝より増す。
そして、ある意味、辺りが暗くなることで諦めもついて、帰路へと向かえる。
街灯の多い街中ならともかく、家の近所は夜になればさすがにフィルムで撮ることはむずかしいから、そうやってまたデジカメの出番もやってくる。
なんだかんだ、フィルムとデジカメの両方が使えることで、いろんなことをカバーしあってバランスのいいカメラ生活を送れているのかもしれない。
こういう感情はスマートフォンのカメラではなかなか味わえない。というか、たぶん考えもしない。だから、日々にちょっとした歓びをふりかけたい人には、ほんと、カメラをおすすめする。
こんな、包容力豊かでクリエイティブに寄り添ってくれる道具を、僕は他に知らない。大袈裟ではなく、世界中のすべての人におすすめしたい気持ちだ。
2022年は、カメラで写真を撮ろう。そして、辺りの道端の光と影をちょっと観察などしてみよう。意外な発見とかあると思うなあ。