きょうは予想通り、一日悪天候。昨夜手に入れたFUJIFIM X-E2とJupiter-8の出番となった。あ、質問をもらったので一応付け加えておくと、X-E2もJupiter-8もまったく防滴仕様ではない笑。ただ、僕が雨の日はライカを持ち出すのを躊躇するんで、もっとラフに使い倒せるデジタルMF機材を持っておこうと考えたわけ。
で、昨夜のモノクロ撮影に続いて、きょうはカラーも試してみようと思ったんだけど、その目的のメインはボディ性能の確認ではなくてJupiter-8の写りを確かめること。ロシアンゾナーと呼ばれるJupiter-8、コピーというよりゾナーそのものと言われる写りの癖みたいなものをまずは掴めればなと思った。でも、正直きょう一日ではJupiter-8がなんたるかは掴めなかった。もちろん、大口径のオールドレンズらしい味のあるボケが楽しめることはある程度分かったんだけど、絞るにつれて性格を変えるその描写変化までは確認する余裕がなかった。
でも、感覚としてはっきり分かったこともある。それが、Jupiter-8だと「綺麗に撮ろう」という意識がいい意味で希薄になるということ。上手く言葉にするのが難しいんだけど、「そんな頑張らずに、もっとラフに撮ろうよ」と語りかけてくるようなところがJupiter-8にはあると思ったんだ。特に僕が装着しているのはデジタルのミラーレス。そもそもいくら失敗しても、そんなこと気にせずに大量のシャッターを切ることができる。そんなことも相まって、とにかくJupiter-8は撮ることの肩の力を抜いてくれるようなキャラクターがある。
この感覚は、僕が所有する他のズミルックスやエルマー、ロッコールなんかとはどこか違う。安いレンズだから?、まあそれも無くはないけど、それよりも、その佇まいによるところが大きいかな。同じオールドレンズでもズミルックスやエルマーはやっぱりどこか高貴さや正統性みたいなものを静かに訴えてくるところがある。それに対してJupiter-8は「要は撮れりゃいいんだよ、大事なのは見た目じゃなくて中身だし、結果だろ」みたいに語りかけてくるとでもいえばいいだろうか。
これはある意味、僕のレンズ觀をぶっ壊してくれたかもしれない。レンズは高価=写りがいい、というもんじゃないという、何かこれまで抱いていたレンズヒエラルキーの先入観みたいなものをぶっ壊してくれる感覚だ。カメラやレンズにかぎっていえば、ブランドもグレードもまったく関係ない、必要なのはじぶんに気持ちよく撮れるか、写るかどうか。写真家じゃなくて、写真“愛好”家の「愛好」の精神みたいなものを教えてくれている気がするんだ。そういう感覚を味わうだけでもこのレンズを持つ意味がある。僕はそう思った。
まあこのへんの話はかなり感覚論でもあるんで、そのフィーリングはぜひ手に入れて感じてほしい。一万円前後で入手可能だから、Jupiter-8はネットでいろいろ調べるより、じぶんの手で、目で撮ってみるのがいちばんだ。あ、この話だけど、Jupiter-8は綺麗に撮れることを期待するレンズじゃないとか、そういう意味ではまったくない。むしろ、いい意味で期待を裏切る写りの良さを見せてくれる。ただ、レンズの効果とは綺麗な写りだけじゃないんだ、ということを教えてくれることがこのレンズの最高性能、そんなことを考えさせるチカラがこのレンズにはあるんだなあ。いやあ、楽しくなってきた、何か新しいとびらが開けたようなね。