平成最後の元旦に、80年代を駆け抜けたNikon FAがやって来た。
いやあ、まさか2019年最初の日にこんなうれしいカメラを手にするとは思ってもいなかった。写真の通り、とても綺麗に保たれたNikon FAがレンズやスピードライトと一緒に僕の手元にやって来たのである。まさに予期せぬお年玉、子どものようにはしゃいだ一日になった。
予期せぬというのは、このFA一式、奥さんのオヤジさんがくれたのである。昔からカメラをやってたらしいとは聞いていたけど、僕のカメララインナップは奥さんには内緒なので(笑)あまり詳しくカメラ談義をしたことはなくて、まさかフィルムニコンユーザーだったとはほんと驚きだった。しかも、たぶん年に数回しか使われなかったであろう美品で、元箱から取説まですべて揃ってる。「もし要るようなら」と言われたんだけど、速攻ありがたく頂きました。
実は僕の手元には以前まで絞り優先AEで撮れるNikon FEがあったんだけど、フィルムカメラを始めたいという人へプレゼントして、今は手元にAEで撮れるマニュアルフォーカスカメラは無かった。そこへ、絞り優先AEどころか、プログラムAEからシャッター優先AEまで、いわゆるPSAM全ポジションで撮れるフィルムカメラがやって来たのである。
Nikon好きな僕の手元には、完全機械式のNikon F2とAFフラッグシップ機のNikon F6の二台のフィルムカメラがあるけど、まさにその間を埋めるマルチモードAEのカメラが揃ったわけである。まるで、僕のラインナップを知ってるかのように写真の神様が隙間を埋めてくれた。これは元旦だけにちょっと神懸かり敵な出来事だなと思った。
少しネットで調べてみると、いつもカメラ情報でお世話になってるサンライズカメラさんがやはり詳しく解説してくれていた。発売されたのは1983年で、FM2やFE2の兄貴分的な存在(つまりシャッタースピードも1/4000まである!)として登場したらしい。今では当たり前になったPSAMのマルチモードAEをNikon初で搭載し、マルチパターン測光も実現したなかなかの意欲作。1984年の第一回カメラグランプリ受賞のカメラということで、当時としてはまさに最先端のカメラだったんだろうね。僕はフィルムカメラを始めたのは極々最近だから、そのあたりの評判はこうしてネット記事で追いかけては一喜一憂してる。
けれど、80年代は僕の青春時代でもあるから、その時代の豊かさみたいなものはよく分かる。とにかく日本のモノづくりが頂点を極めていた時代。おそらくカメラも日本製が世界をリードしていた時代で、その当時のありったけの技術をNikonがこのFAに込めたであろうことは容易に想像がつく。実際、Nikon FAの実機を目の前にして、その佇まいから滲み出るハイテク感やハイクオリティな感覚はいかにもクールジャパンでかっこいい。
うれしいことにブラックボディで、大事に皮のケースに収まって保管されていたFAは、底部なんかをみると塗りの贅沢さを感じる。下地は真鍮みたいなんで、これから僕が使い込んでエイジングを楽しむこともできる。電子式シャッター機だから故障の不安は無くはないけど、それも含めて時代の変換を楽しめるカメラなんじゃないかと思う。
FAと一緒にやって来たのは、オールドニッコールのAi-S 50/1.4とZoom Nikkor 70-210 f4-5.6、そしてスピードライトSB-16B、どれも大事に使われた艶々の品である。いやあ、こんな物頂いていいんだろうかと思うけど、カメラをやる人って「使わないじぶんが持ち続けるより、使ってもらえる人に託したほうがいい」と思うもんなんだよね。僕もそう思う。だから、いちおう現役のフィルムフリークである僕がしっかりメンテがてらFAを使っていってあげようと思った。
今年の僕の豊富は「カメラやレンズを買わない」ということだったんだけど(笑)、買わなくても頂くという手があった!と、とてもうれしい驚きにいま包まれている。フィルムカメラをやっていると、こうして点と点が繋がることがほんとよくある。そう、フィルムカメラは時空を超えるコミュニケーションアイテムでもあるんだ。ことしはまだ正月休みが五日間もある。さっき電池を入れ替えて露出計や電子式シャッターが作動するのも確認したから、フィルムを詰めて試し撮りの正月休みを楽しみたいと思ってる。いやあ、うれしい、ほんとうれしい。久しぶりにフィルムカメラの試し撮りというドキドキの前夜を迎えている。