初めての谷中銀座だった。どうしても一度じぶんの目で確かめてみたかったのである。小説「谷中レトロカメラ店の謎日和」の舞台、谷中という街を。駅を降りてしばらく歩いた先に、夕焼けではなかったけど、夕焼けだんだんと呼ばれるこの階段が見えてきた時は嬉しかったな。なんか心が時空をトリップした。僕は初めてじゃないかな、こうして小説の舞台が観たくなって訪れたのって。誤解を恐れずに言うと、小説を読んで僕がイメージしていた光景とは少し違ったのだけど、それは小説に加えてもうひとつ別の世界も体験できたと言う意味では得したのかもしれない。こうして見ると坂っていいよね、車の入らない坂。それだけで人間味が増すから不思議だ。街をゆっくり歩きながら、途中でメンチカツを買ってほおばる。こんなの何十年ぶりだろ笑。空き時間を使って立ち寄ってみたからあまり長くはいられなかったけど、気分はあの頃に行けた気がする。匂いのする街、そんなイメージかな。この光景の中に僕が小説を読みながら想像した今宮写真機店の絵をダブらせて短いけどつかの間の街歩きを楽しんだ。また来る機会があれば、その時は文字通り夕焼けだんだんを見たいな、やわらかくまぶしいやつ。点と点がつながって何かにみちびかれる。こういう出会いをもたらしてくれたカメラという趣味、この小説、そしてそれを書かれた柊サナカさんに感謝したいと思う。スペシャルサンクスです。
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