バルナックライカが描く桜の記憶も残しておこう。ふだんはスナップ撮るのもなにかと周囲に気をつかうんだけど、この桜の季節だけは誰もがカメラを構えてあちこちで写真を撮ってるから、カメラを構えても気にならないところがいい。
桜を撮り始めると、知らないうちに夢中でシャッターを切っていて、あっという間にフィルム一本を撮り終わる。他の花ではそうはならない。桜だけが持つ何かなんだろうね、本能に作用する何か。
バルナックにつけているエルマーは、いわゆるスクリューマウントの赤エルマーと呼ばれるもの。1950年代にLマウントエルマーの最終形として世に登場した、いわば熟成のエルマー。それだけに現代のレンズに劣らない美しい描写を見せてくれる。
その後に登場するMマウントのエルマーよりさらに優しい描写を見せてくれている気がするのは、ボディIIIaのおかげもあるのだろうか。ほんとうに時空を超えたような、なんとも言えない美しい光の封じ込め方をしてくれる。
そのあまりにコンパクトなボディのLeica IIIaなら、雑踏に溶け込んで誰も撮影する僕を気にしたりしない。それもまたバルナックライカの最高性能のひとつだと思う。
来週にはきっと咲いていないであろう一瞬の美しい光景。フィルムで撮る記憶は僕にとってはひたすらまぶしい。この先何年、このフィルムという記憶メディアで撮り続けられるかわからないけど、フィルムカメラたちが元気に生き続けるかぎり、フィルムたちも残り続けるといいなあ。心底そう思う。
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