マッハのようなスピードで駆け抜けていった一週間だった。金曜の夜、ようやくひと息つける時間が訪れたので、少しブログを書いてみる。今週、僕のもとへやってきたLeica M-P typ240 ブラックペイントのことについてだ。
購入したのは3日ほど前だから、試し撮りはすでに数百枚ほど撮ることができた。試し撮り数百枚なんて、デジタルだからできる芸当なわけだけど。結論から言うと、M-Pは僕がイメージしたストリートスナップに適した一台だったと言っていいと思う。
ひと言でいえば、Leica M3で撮るイメージで操れ、フィルムで撮るような写真に余韻がある。しかも、ストリートスナップにおいてシンプルさを要求する僕のカメラ像に、このデジタルのレンジファインダーはしっかりと応えてくれた。つまり、外へ持ち出したくなるスナップシューターなのである。
詳しい機能や性能は他のレビューサイトに任せるとして、このM-Pを僕的な視点で紐解くと、まず全身をブラックペイントで纏っているのがいい。M-PはLeica MにProfessionalのPが加えられたモデルだけど、それは性能面以上に意匠に好影響をもたらしてくれた。赤い丸のLeicaロゴ排除されたいわゆるステルスモデル。ストリートでまず目立たないのである。
実際に街中でM-Pをかまえても、特に誰も必要にこちらを見たりはしなかった。ストリートでスナップを撮ることにおいて、これ以上の最高性能はない。とにかく目立たないんだ。そして、部屋の中で聞いた時はM3よりも少々大きく感じたシャッター音も、街中ではマットな低音に抑えられ、これも周囲の人を振り返らせることは一度もなかった。
決して大げさな言い方ではなく、フルサイズのカメラを持ちながら、街中で存在を消せるのである。この三日間でそれが確認できただけで十分だった。正直、機械式カメラのように半世紀、一世紀と生き残り続けることはないデジカメにここまでお金をかける価値があるのかと少し葛藤もあったけど、そう言う疑念が吹っ飛んだ三日間でもあった。
最新のM10と比べると太い、大きいと言われるボディも、僕はそうは感じなかった。それよりも漆黒の存在を消せるボディのほうが僕の撮り方においては何倍も手の中にしっくりくる。ありとあらゆるパーツがブラックアウトされたボディは、何もプロだけじゃなく、僕のような街中でカメラをかまえることに勇気を必要とする人間にも実に心強い仕様なんだ。
写真のほうは、気がついたらモノクロばかりで撮っていた。そう、フィルムでは現像機の減少でなかなか撮れずにいたモノクロを撮りたいじぶんがいたんだと思う。バルナックライカIIIaやライカM3のあのフィルムで撮るストリートスナップの感覚をしてモノクロを撮ってみたい。そういうじぶんが色濃く存在していたんだと思う。
モノクロ写真のなかでセピア的な温か味を持つのが、M-Pのモノクロ「ウォーム」ポジションで撮ったもの。その他のいわゆる白黒は「ナチュラル」ポジションだ。モノクロはこれに数種類の「カラーフィルター」をのせて撮ることもできる。カラーもビビッドやスムーズというポジションがあるけど、このモノクロの多様さはJPEG撮りに向いたカメラでもあり、そこも僕がM-Pを選択した理由だった。
夜も撮ってみたけど、まだまだ僕の腕と露出、感度感覚があまい。フィルムのIIIaやM3で夜間撮ったもののほうがどうかしたらちゃんと撮れてるとすら思えるレベルだけど、そこはカメラ任せにせず、僕がM-Pのクセをもっと掴むこと、腕があがっていくことが必要だし、それはとても伸びしろがあることも意味する。そう、僕の場合、カメラや写真は一生試し撮りだから。
レンズはひとまずM3につけていたZeiss Planarをつけて使い始めた。これでしばらく撮り続けてみて、M3のレンズも含めて、交換レンズをじっくり探していきたいと思ってる。ただ、今のところPlanarが描き出してくれる写真にはまったく不満はないから、むしろM3用に1950年代当時のレンズを新たに探してみようかとも考えている。いっそ、バルナックIIIaでも使えるLマウントのものでもおもしろい。
レビューや作例というにはあまりにシンプルな内容で恐縮なんたけど、実際、僕がM-Pを手にしようと思ったのはまさにそんなシンプルな理由からなんだ。一眼レフではストリートに出ずにいたじぶんが、バルナックを手にしてからレンジファインダーとストリートに出る軽快さ、気持ちよさに気づいた。そして、それがM-Pへとつながっていった。これもまた必然なのである。
さすがにカメラとレンズが増えすぎたところは感じていて、カメラはIIIa、M3、そしてM-Pのライカ3台だけにしようかと思うところもある。僕は器用じゃないんで、そんなにたくさんのカメラたちを満足いくレベルで使いまわせる自信はない。僕の部屋でカメラが眠るよりも、もっと若い人たちに使ってもらったほうが手持ちのカメラたちも幸福かもしれないしね。しばらく様子をみて、徐々に断捨離していければいいなと考えている。
Leica M-P、このカメラには間違いなくバルナックからM3へと受け継がれていったライカらしい血が脈々と流れている。最先端の性能だけなら、ほかに素晴らしい性能のカメラはたくさんあると思うけど、僕はこのM-Pにストリートスナップの原点へのライカの思いを見た。大した理由に聞こえないかもしれないけど、それが僕にはM-Pと残りの人生を生きていこうと考えた決め手だ。後はそう、ひたすら撮るだけだ、真の意味で手に馴染むまで。