
Nikon Dfのある日常、まとめ レビュー2019。
きのうは「まとめ記事」としてLeica M-P typ240をとりあげたんだけど、次のカメラとなればやっぱりこれだろう、ニコンDf。
このカメラは紛れもなく「奇跡的に販売されたカメラ」。世の中が先進的なデジカメ競争を繰り広げている真っ只中に、往年のフィルムニコンのレトロルックをまとって登場してきた。「こんなカメラあったらいいよね」と冗談で話すことはあっても、まさか本当に製品化されて現行モデルにラインナップされるなんて誰もが思わなかったはずだ。そんな唯一無二のカメラなのである。

そう、僕はフィルムニコンで日々写真を楽しんでいたんで、こんなフィルムニコンのようなデジカメがあれば最高なんだけどなあ、と考えた一人なのである。それくらいこのDfというカメラは、ニコンファンの夢がぜんぶ詰まっている。

まずロゴがいわゆる「垂直ロゴ」と呼ばれるものが復刻されて付けられている。現在のおなじみの斜体ロゴではなく、昭和のニコン黄金期の懐かしきロゴを復活させるなんて、通常のマーケティングの常識では考えられない。デザインじゃなくてロゴだからね。けれどNikonはそこを変えてきた。もうこれだけで、このカメラに込めた思いがすべて表現されているといっていい。

Dfは現行モデルなんで、あたりまえに現代の実用品フルサイズ一眼レフカメラとして便利に使える。けれどこのカメラの真骨頂はやはり往年のニコンのレンズたち「オールドニッコール」のほぼすべて装着して楽しめるところにある。MFレンズをつけて撮ることが当たり前だったアノ時代の所作がまんまデジカメで楽しめるのである。

Dfのフォルムはペンタ部から軍艦部までまさにフィルムニコンのNikon FM/FEシリーズと瓜二つだ。MFレンズの絞り値ダイヤルを動かすのと同様、当然、ISO感度やシャッタースピードもダイヤルをカチカチ回して撮ることが自然だ。もちろんAFレンズをつけてオート撮影も楽しめるけど、Dfは積極的にマニュアルで撮りたくなる雰囲気をプンプン放っている。

もちろん、オールドニッコールを楽しむにしても、別にDfじゃなくて他のNikon一眼レフ機でもいいとも言えるんだけど、当然レンズがオールドなわけだから、ボディもその時代のレンズが装着されることを意図したデザインのほうが美しい。その点、Dfはサマになる。撮り手をソノ気にさせることこそがDfの最高性能じゃないかと思ってる。

カメラをどうしても一台だけにする必要があるとしたら、僕はLeica M-PかこのNikon Dfのどちらかにするだろうな。子どものスポーツ大会なんかを撮るとしたら、そんな時に望遠レンズも装着できるDfのほうがより現実的かもしれないね。まさにレトロ趣味から生活の中の実益まで、Df一台あればすべて事足りるとも言える。そんなカメラ、他にはちょっと思いつかないな。

Nikon Dfは発売されてもう五年以上経つのかな。今でも現行ラインナップで、後継機はおそらくもう出ない。出るとしたらミラーレスになって出るんだろうけど、Fマウントレンズのアダプターをかまさずに美しいシルエットのまま直接装着できるDfは現行モデルが最後だろう。そもそも最初からレトロなデザインでもあるから、これ以上古くさくなることもない。

たしかに、これからのカメラは確実にミラーレスになっていくだろうけど、プロじゃなくてアマチュアの趣味カメラであれば、何も最新機能にこだわる必要もないし、古き良きFマウントをじっくり楽しむことのほうがいかにも趣味らしいともいえる。Dfというカメラは、なんというか「ようやく時代が追いついてきた」と言えるんじゃないかな、いま。

Nikon Df、こんなカメラはこの先、二度と製品化なんかされないだろう。誰もが持つという定番カメラというよりは、コアなニコンファンが選ぶ通なカメラという匂いがプンプンするからね。でも、それもDfの姿だけど、オールマイティに実用カメラとしても軽量コンパクトで実はイチオシというのもまたDfの姿。一人でも多くの人にその良さや存在が伝わるといいな。一人の実際のユーザーの声としてね。