僕とフィルムと夜スナップについて。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fujifilm 業務用100

僕が夜もフィルムで撮り始めたのは、ここ数ヶ月のこと。それまではフィルムで夜スナップが撮れるなんて僕の中にイメージがなかった。そんな固定概念をひっくり返すきっかけになったのが、バルナックライカIIIaと、秋山泰彦さんのコラム写真集「モノクロ×ライカ」の出会いだった。

その写真集には夜のかなり暗がりで撮られたフィルムライカによる写真がたくさん出てくる。僕的にはこの写真集との出会いは目から鱗だった。「え?フィルムで夜のスナップが撮れるんだ」という軽い衝撃。それまでの僕は、高感度ではないフィルムでまさか夜の街を撮ることができるなんて思ってもいなかった。ところがこの撮影者の秋山さんいわく、感度400のフィルムがあればミラーショックの小さいレンジファインダーのライカなら十分、夜の街のスナップが撮れると書かれていた。

じゃあ試してみようと、Lomography400やNatura1600をライカに詰めては、夜の街へ繰り出し試し撮りをする日々がしばらく続いた。そうして気がついたのは、感度100でも撮れるくらい、たしかにレンジファインダーのカメラなら夜スナップも十分いけるという事実だった。

秋山泰彦氏の写真集「モノクロ×ライカ」

以来、僕の写真観は大きく変わった。仕事終わりの夕刻から帰り道がてら夜スナップを撮るようになる。そのうち感度100のフィルムでも息を殺して撮りさえすればちゃんと写ることに気づき、その夜スナップ熱は結局、デジタルライカM-P(typ240)を購入するに至り、なんとなく僕のスナップのかたちができあがっていくことになる。

この一枚目の写真に至っては開放F3.5と決して明るいレンズではないRollei35で撮ったもので、ついにはフィルムも昼間と同じ感度100で撮るようになった。シャッタースピードはss1/50くらいかな、それで十分撮れることに気づいてからは、夜スナップの撮影量が増えていった。F3.5でもこれだけ撮れるんだから、より明るいレンズならもっと確実に綺麗に撮れるだろう。

Rollei35, Tessar 40/3.5,Fujifilm 業務用100

過去に高感度フィルムのNatura1600で夜スナップを撮ったことはあるし、Lomography400なんかでも試し撮りをしたことはある。けれど感度100でも撮れるとわかってからは俄然、業務用100を詰めて撮ることがほとんどになった。これもまた僕にとっては壮大な実験だった。近ごろはLeica M3で撮ることもあるし、それもすべて手持ち撮影、それでもけっこう綺麗に写るLeica IIIaとRollei35はすっかり僕の夜スナップの相棒になった。

Rollei35, Tessar 40/3.5,Fujifilm 業務用100

その秋山氏のコラムを見ると、ss1/8までは撮れるようなことを書いてある。僕にとっては未知の世界だ。けれど、カメラをしっかり両手で固定さえすればシャッターを切った時のショックもほぼなく、たしかにレンジファインダーならいけるのである。夜にスナップが撮れることで、僕のカメラとの時間はかなり増えたし、スナップのバリエーションも増えた。フィルムで夜スナップを撮ることが日常であり楽しみになったのである。今度はリバーサルで夜スナップを試してみたいとか次々と興味も高まる。みんなはどうしてるのかな、夜スナップ。高感度フィルムにするか、それともカメラ自体をデジタルにするか、好奇心は尽きないのである。

光が撮りたいんだ。フィルムがすくいとる光。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fujifilm 業務用100

言うほど光は宿ってないじゃん、と言われそうだけど、僕にとってはこんな曇りの日の写真でも、フィルムがすくいとるその光の独特さを感じて、しばらく見入ってしまう。こういう微妙で繊細な光の表現は、やはりデジタルにはむずかしい。

フィルムにしか撮れない世界があるかぎり、僕はフィルムカメラを持ち続けるだろうし、たとえ撮るものが平凡な日々でもシャッターを切り続けると思う。物理的にはフィルムはいらない現代かもしれないけど、こうして心や気分を潤したり、本能を満たすためには、やはりフィルムは必要なんだ。

ふと思ったんだけど、最初に写真を発明しようと考えた人は、目の前の事象を写真に残したいと思ったんじゃなくて、この目の前の光をすくいとろうとしたんじゃないかな。そらくらい僕にはフィルム写真=光の記憶に思える。とんな平凡な光景でも、その光は神がかってるから。

Rollei35のエンジンがあったまってきた。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fujifilm業務用100

Twitterにも書いたんだけど、フィルムカメラというのは使い込むことで内部の機械が馴染んで、写りがだんだんとシャープになるというか滑らかになるというか、そういうところがあるよね。そんな気がする。人間らしいというかね。

このRollei35も手に入れた直後の試し撮りの時より、4〜5本目となる今のほうがどこか写りが洗練されてきている気がする。カメラは使ってあげることこそが最上のメンテナンス、みたいに言うけど、それはもうほんとにそうで、僕は毎週可能なかぎり複数台のカメラを動かしてやるように心がけている。

そういえば、このRollei35も手に入れたのは最近だけど、かなり前から中古カメラ店のショーケースに並んでいた気がする。その間、お店側でメンテナンスとして空シャッターとか切っていたかもしれないけど、フィルムまでは入れて動かしていないだろうから、僕がフィルムを入れ始めたことで何かしらフィルムの湿気というか、オイル作用みたいなものが働いたのか、ここにきて写りが良くなった気がするんだよなあ。

この時のフィルムはFUJIFILMの業務用100だけど、いくら感度が100とはいえ、これだけ綿密に人とか木々を表現してくれるのならば、もはや何も言うことはない。実はRollei35には露出計が付いているけど、僕はまったく使っていなくて、体感露出と目測で撮っている。それでも、あゝよく写るなこのテッサー、という感じだから、Rollei35はほんと優秀で素晴らしいレンズを積んでいると感心する。

この使い続けていくうちに写りが良くなっていく印象は、ほかのLeica M3やバルナック、F2やF6なんかにも同じように感じていたから、なかなか信ぴょう性のある「フィルムカメラあるある」かもしれない。こうなってくると、こんどはリバーサルフィルムで撮りたくなる。僕はまだ街中のスナップでリバーサルを使ったことはない。家の在庫にはVelvia100が数本あるから、近いうちに試してみるかな。まだまだ試したことのないカメラとレンズ、フィルムの組み合わせが多数ある。やっぱり、人生ずっと試し撮りだ。

この時代の機能美というのは洒落ている。Rolleiflex Standard & Rollei35

Rolleiflex Standard, Rollei35

この時代というのは感覚的には1970年以前といったところだろうか。この時代のカメラたちをいくつか所有し、実用品として写真を撮るようになって、本当にその機械としての作り込みの凄さ、そしてその結果研ぎ澄まされたような機能美にいつもいつも魅せられる。

考えてみるとプラスチックが登場したあたりからその品みたいなものとは違う方向へカメラたちは向かい始めたんじゃないかと思う。相当便利で扱いやすく、軽く、さまざまな形に加工しやすくなったんだろうけど、その結果、セクシーさみたいなものは失われていったんじゃないかという気がする。僕はこの当時はカメラをやっていなかったから、リアルなその時代の転換みたいものは分からないんだけど。想像としてね。

ライカにしても、ローライにしても、ニコンにしても、1970年頃までのものは見るからに美しい。金属の艶かしさ、手に持った時の冷やっとした重量感ある手ざわり、そして鈍く光る各パーツ、どれをとってもプロダクトの黄金時代のようなまぶしさを僕は感じる。こういうデザインはデザインしようとしたらあざとくなるから、こうして機能美を突き詰めていった先にたどり着く姿が自然体で美しい。そして、その出しゃばらない感じが実に洒落ている。

復刻したものじゃなくて、当時としては最新鋭だったものが年月を経た結果クラシカルになる。それが本物で本気のデザインが放つセクシーさなんだと思う。現代のプロダクトデザイナーたちは大変だと思う。こんな時代のものたちと比べられながら新しいデザインを創造していかないといけないんだからね。いっそ、カメラらしいデザインを一切脱ぎ捨てて、現代の機能に即した現代の機能美を追求したほうが新しいセクシーさや洒落た世界を作れるのかもしれないね。僕は写真を撮るのは好きだけど、こうしてカメラ自体を撮るのも好きだ。そして、こうして眺めるのも好きだ。うまく言えないけどパワーをもらえるんだよね、眺めてると。降参だよ、まったく。

和製テッサーKonica C35を経て、本家テッサーRollei35へ。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

先週手に入れたRollei35の試し撮りが現像からあがってきた。まずはしっかり撮れていてホッとしている。やっぱりね、初めて手にするクラシックカメラの最初の現像は何度体験しても緊張する。幸い僕がこれまで手にしてきたクラシックカメラたちは試し撮り時に不具合があったことはないから、馴染みのカメラ店には感謝している。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

さて、そのRollei35だけど、僕のはいわゆる歴代最初のモデルでレンズはTessar 40/3.5を積んでいる。そう、僕が所有するRolleiflex Standardと同じであり、フィルムコンパクトであるKonica C35のレンズ、Hexanon 38/2.8のモデルになったレンズである。

Rollei35, Tessar 40/3.5

だから、僕にとってRollei35の試し撮りは個体がしっかり動作するかの確認であったと同時に、これまでスナップで多用してきたKonica C35との操作や写りとの比較が楽しみであった。Konica  C35の作例は過去記事を見てもらうとして、やはりテッサー型の二台の写りは似てるなと思った。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

焦点距離もKonica C35が38mmに対してRollei35は40mm、開放F値もf2.8とF3.5と近い。フィルムカメラの場合は、写真の質を決めるのはレンズとフィルムと言われる。なので、同じレンズ構成のテッサー型でフィルムが同じなら、焦点距離もほぼ同じなこの二台の写りは理屈的にもかなり近いものになる。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

写真の描写の質としては、シャープでカリッとした乾いた質感かな。僕はKonica C35とRollei35の写真を並べてそれぞれ撮影機材を当てろと言われたら自信がない。まだRollei35のクセをつかめていない僕は、この二台のカメラの描写の差を見極める能力はまだない。ただはっきり言えるのは、やはり本能的にテッサー系レンズは好き、ということである。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

Konica C35もRollei35も実にコンパクトで手の中にすっぽり収まる。そんな玩具のようなボディから、シャープで綿密な写真を繰り出すそのギャップのような姿が僕にとってはテッサー型レンズの魅力だ。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

とはいえ、この二台は扱い方については趣が異なる。Konica C35のほうは当時の大衆的カメラだけにピントを合わせてシャッターを押すだけの手軽さが売りだけど、Rollei35のほうは高級コンパクトとしてドイツで生まれ、Rolleiflexを彷彿させる絞りとシャッタースピードダイヤルをじぶんで合わせて撮る。しかも距離計は搭載しておらず、目測だ。つまり、Konica C35よりは少々手間がかかるフィルムコンパクトだということ。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

まあ一般的な解釈として「手間がかかる」とは書いたけど、僕個人としてはだからこそRollei35を手に入れたところがある。つまり手間というよりは楽しみ。これまでフィルムコンパクトはKonica C35を多用してきた僕が、あえてRollei35も手に入れたことのわけはそこにある。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

バルナックライカIIIaを手にして街中のスナップを撮るようになって、すっかりマニュアルで露出を決めて撮ること、目測でヒュンヒュンとシャッターを切ることの楽しみを覚えたのである。カメラに撮ってもらうんじゃなくて、僕がカメラと共同作業で撮る感じ、それが何よりスナップする時の楽しみになってきたんだ。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

それともうひとつのローライ、二眼レフのRolleiflex Standardで近ごろ撮るようになったことも大きい。レンズはくしくもテッサー。このローライ×ツァイス・テッサーの組み合わせに魅せられた結果、街中のスナップでもこの組み合わせで撮ってみたいと思ったんだ。さすがに二眼レフを街中に持ち出してスナップする勇気というか気概はまだ僕にはなかったから。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

そういう意味では、週末にまったりと撮るあのRolleiflex Standardの撮影感覚を街中に持ち出すことができたという意味で、Rollei35を手に入れた意義は僕に撮ってはかなり大きい。Konica C35はあいかわらず大好きなカメラだけど、あえて手間をかけて撮るという意味では、僕はKonica C35を卒業してRollei35にたどり着いたのかもしれない。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

撮る作法みたいなものもRollei35はちょっと独特で、フィルム装填の方法から沈胴式レンズの出し入れまで、ちょっとした知識を必要とする。Konica C:35がそれこそ知識がなくてもシャッターを押すだけで写真が撮れるのに比べると、Rollei35は撮り手のことを試すみたいな構造が施されている。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

にんげんというのは不思議な生き物で、手がかかることの方が好きだったりするんだよね。Rollei35は慣れるとそうではないんだろうけど、初めて手にした時はそういうギミックで撮影者を試し、たぶんその撮り手を認めた先になんともいえない撮る快感があるカメラなんじゃないかと思う。

Rollei35, Tessar 40/3.5, Fuji業務用100

まあ初めての試し撮りだから、写真の上手い下手は勘弁してもらうとして、なんとなくRollei35の写りの雰囲気みたいなものは伝わるんじゃないかと思うけど、どうだろう。僕としては期待通りの写りでもあったし、Konica C35よりは難解な撮影プロセスがなかなか新鮮だった。

Rollei35, Tessar 40/3.5

そうそう、Rollei35を購入したことをTwitterにあげたら、実にたくさんの人が祝福とともに声をかけてくれた。クラシックカメラ好きなら一度は通る道、みたいなニュアンスのコメントが多かったかな。その意味もこうして試し撮りをしてみたことで少しわかった気がする。慣れるまではしばらくの間、このRollei35で集中的にスナップを撮ってみたいと思う。実にシンプルなカメラでもあるけど、その分とても奥深い魅力があるような気もするんだよね。やっぱりフィルムカメラはいいな。こんなスナップ欲を刺激するカメラもそうはないと思う。手のかかることは、それだけ逆に愛おしいのである。その先の印象の変化などはまたおいおいブログに綴っていくということで、きょうはこのへんで。