日々のカメラ、週末のロードバイク。僕は生きかえる。

Specialized Roubaix SL4 Sport, Fujifilm X-E2 + Jupiter-8 50/2

6月最後の土曜日の朝、激しかった雨が奇跡的にあがり、2時間程度なら持ちそうな空の色を確認して、僕はロードバイクを持ち出した。月末はプールも休館日のため、この体の鈍った感じを取り去るにはロードバイクに乗るしかないように思えた。

いつもの通り、車と並走せずに済む川沿いの道まではそろりそろりとロードバイクを走らせる。ママチャリと同じくらいのスピードだが、公道はいつもこんなペース。自転車のF1カーとも言われるロードバイクはあまりに軽量すぎるため、車の多い道や歩行者が行き交う道ではスピードが出過ぎるし、ビンディングシューズでペダルと固定された足は、急な停止には向かない。つまり、人や車のいない道で高速で走れる場所でしかロードバイクのポテンシャルは引き出せないし、自転車道が整備されていない日本の道路ではほとんどの場合、ロードバイクの本質を楽しむことはむずかしい。

だから、僕の場合はロードバイクのポテンシャルが引き出せない道路では、ママチャリと変わらない乗り方しかしない。僕の知人でロードバイクやトライアスロン(TTバイク)をやってる人間は、車にロードバイクを積んで移動し、安全な場所に着いたらようやくロードバイクにまたがりハイパフォーマンスを楽しむ。ロードバイクのポテンシャルを高次元で引き出せる乗り方をした時の爽快感はたまらないものがある。無心になれたり、記憶が蘇ったり、肉体が風と同化したり、想像を超えた多幸感に包まれる。そして、そこまで力を出し尽くした後の疲労感は、何者にも変えがたいほど心地いい。

現代はどんなにしなやかに仕事をしようと思っても、かなりのストレスと疲労感にさいなまれるけど、それでもなんとかまた翌週がんばれるのは、僕にとっては週末のこのロードバイクのおかげだ。このロードバイクが僕の主に肉体的な疲労感をリセットしてくれるとするならば、脳的なリラックスをもたらしてくれるのがカメラ。毎日わずかずつでもシャッターを切れるよろこびは、他のものでは代わりがきかない。

人間には、じぶんを解放することができる何かがいる。僕の場合なら、それはカメラでありロードバイクだ。Runや水泳もするけど、道具と戯れることが僕はどうやら好きなようで、その意味ではカメラとロードバイクは脳と肉体をリセットしたり高めたりするのにとても合っている。そして、カメラとロードバイクは相性もいい。きょうはロードバイクで走る背中にミラーレスカメラFujifilm X-E2を乗せていて、休憩がてら何枚か道中のスナップを楽しんだ。ロードバイクに乗る時は大抵、なんらかのカメラはいつも一緒だし、逆にカメラを楽しみたいからロードバイクに乗って出かけることもある。決してこけることのない安全な乗り方をすれば、どんなカメラでもこうしてロードバイクと少し遠出の散歩カメラ的スナップが楽しめる。

僕はカメラもロードバイクも楽しむ時は大抵ソロ、つまりひとりだ。仕事も家庭も常に誰かと動いている中で、ひとりになれる時間は貴重だし、じぶんのペースみたいなものを取り戻せるところがある。今の目の前のことだけでなく、昨日のことを考えたり、明日のこと、数年後のこととかいろんなことが頭の中をめぐる。そうした脳のゆらぎみたいなものに、カメラとロードバイクはとても心地よく刺激を与えてくれる。子どもの頃は永遠と思えたゆるやかな時間の流れも、この歳になると加速度的に慌ただしく過ぎていく。そういう日々と週末に、少しだけじぶんらしいペースの時間を。趣味とは遊びだけじゃなくて、じぶんらしさを確認する大切な時間でもあるんだ。

雨の土曜日、ミラーレスX-E2でフィルムシミュレーションを撮り比べてみた。

Fujifilm X-E2, Jupiter-8 50/2

雨の日のカメラ撮影はみんなどうしてるだろうか。僕は雨専用カメラとしてこのFujifilm X-E2と安価なオールドレンズを用意している。防水防滴仕様ではないんだけど、雨を気にせず、まあ仮に壊れることがあっても平気というつもりで、このラフな組み合わせの機材を使っている。

フィルムシミュレーション〈クラシッククローム〉

だからといって写りも安価かというと、決してそうではない。比べるものではないけど、M型デジタルのLeica M-P typ240の描写と同じように気に入っているといえば、そのクオリティを分かってもらえるだろうか。そこには、やはりFUJIFILMミラーレス機が搭載している「フィルムシミュレーション」が大きく影響していると思う。そこで、いくつかのカラーのポジションを試してみた。

フィルムシミュレーション〈クラシッククローム〉
フィルムシミュレーション〈クラシッククローム〉

最初の3枚は僕がいつも常用しているポジション〈クラシッククローム〉だ。説明にはこう書いてある…「発色を抑えた暗部のコントラストを高めることで、落ち着いた表現に適します」。デジカメはフィルムに比べアンダー気味の写真が合うから、まさにデジカメポジションといえるかもしれない。

フィルムシミュレーション〈Velvia/ビビッド〉
フィルムシミュレーション〈Velvia/ビビッド〉
フィルムシミュレーション〈Velvia/ビビッド〉

続いての3枚がフィルムファンにはおなじみの〈Velvia/ビビッド〉だ。Velviaは僕がフィルムカメラでも使っているリバーサル(ポジ)フィルムの風合いがモチーフだ。説明には…「高彩度な発色とメリハリのある階調表現で、風景・自然写真に最適です」と書いてある。たしかに、しっとりと落ち着いたクラシッククロームと比べると、俄然見た目は鮮やかで華やかになる。

フィルムシミュレーション〈ASTIA/ソフト〉
フィルムシミュレーション〈ASTIA/ソフト〉
フィルムシミュレーション〈ASTIA/ソフト〉

そして最後の3枚が〈ASTIA/ソフト〉。実は僕はこのポジション、今日初めて使ってみた。フィルムもASTIAは使ったことがないから、どこか馴染みがなかったんだよね。説明にはこう書いてある…「落ち着いた発色とソフトな階調で、しっとりとした表現に適しています」。さて、どうだろう。

こうしてみるとFUJIFILM機のフィルムシミュレーションはやっぱりいいね。もちろんフィルムそのものの発色や階調なんかとは異なるけど、デジタルでもフィルムのフィーリングをベースにした写真づくりにこだわっていることが伝わってくる豊かさがある。オールドレンズで撮っているのもあるけど、僕はこのX-E2が写し出す世界に触れていっぺんにFUJIFILMのカメラのファンになった。デジタルは写りすぎてちょっと…というのはあるけど、フィルム現像コストをかけずにこうして撮り比べができるのはデジタルの強み。ミラーレス×オールドレンズの世界もまたなかなかのもんなのである。

僕にとってM-Pは、オールドレンズ 母艦デジタル機。

Leica M-P typ240, Industar-61 55/2.8

Leica M-P〈typ240〉はいわゆるM型デジタルと呼ばれる現代のレンジファインダー機。もちろんレンズも現代のライカレンズを装着すれば最高の写真が撮れるのかもしれないけど、僕のM-Pにはオールドレンズ ばかりが装着されている。

Leica M-P typ240, Elmar 50/3.5

それは、もともとデジタル機が欲しいと思ったというより、「フィルムライカで撮っているスナップ撮影の感覚を、デジタル機でも得たかったから」ということに尽きる。Leica IIIaやLeica M3をストリートに持ち出して撮るアノ感覚をそのまま、デジタルに持ち込みたかったんだ。

Leica M-P typ240, M-Rokkor 28/2.8

果たして、そんなアナログな撮影感覚を現代のデジタル機で実現できるのか。結論から言うと、M-Pといくつかのオールドレンズ は、僕の期待いや希望に想像以上に応えてくれたと言っていい。それくらい、Leicaはデジタルにおいても「あの撮影感覚」を裏切ることなく再現してくれた。

Leica M-P typ240, Elmar M 50/3.5

厳密にいえば撮れる写真の風合いはフィルムとは違う。けれど、ファインダーをのぞいた感覚、マニュアルでさっとピントを合わせる、もしくは目測でカメラを構える感覚、そしてレンズの開放付近の癖であり味を楽しむ撮り心地というものは、間違いなくフィルムライカの延長線上にあった。

Leica M-P typ240, Summilux 50/1.4 2nd

オールドレンズの楽しみ方は人それぞれいろいろある。いちばんポピュラーなのはミラーレス機に各種マウントアダプターをかませて多種多様な往年のレンズたちを楽しむ方法で、SONYのα7系ボディが最も人気のオールドレンズ 母艦機。その秘密はレンズの焦点距離をそのまま使える「フルサイズセンサー機」ということになるだろう。

Leica M-P typ240, Jupiter-8 50/2

それでいえば、このM-Pもフルサイズ機なので、オールドレンズの味を焦点距離そのままに楽しめるし、なによりフィルムライカ同様、LMリングがあればバルナック用のスクリューマウント(Lマウント)レンズとM3で使っているMマウントレンズたちが実に簡単に装着できる。そのフィルムライカとデジタルライカの間をシームレスに行き来する感覚がとてもじぶんには合っていたように思う。例えば日中でもss1/4000のM-Pならレンズの開放付近で撮れるし、夜間スナップでも感度をiso3200くらいまで上げれば同じくオールドレンズのおいしい描写が楽しめる。

僕がM型デジタルへ行ったのは必然だし、それはデジタルを手にしたいというより、あのフィルムライカで撮るスナップ感覚をいつでもどんな状況下でも楽しめるという意味でのチョイスだった。ライカは、このフィルムライクに撮れる感覚を想像以上にこだわっているカメラメーカーだと思う。もし、フィルムライカの撮影感覚に感銘を受けてる人がいたら、それはたぶんなんの違和感もなくM型デジタルへ行ける。そして、それはなかなか頼もしいオールドレンズ 母艦機を手に入れることを意味する。